lovefool

たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

  ラヴフール(www.lovefool.jp) 

映画「ドラえもん のび太の恐竜2006」


声優が総入れ替えだったり、テンポ感がかなり今時だったり、定番アニメとしては不安になる要素が大きいのかもしれないけど、そんな不安を吹き飛ばすぐらい、活き活きとあたらしい命が吹き込まれていてよかった。


昔、水口哲也が「ハイビジョンの時代になってもドラえもんのおもしろさが変わるわけではない」と解像度と感動の関係性について語っていて、当時僕は「そりゃそうだ」と思っていたけど、でも実際、新世代のドラえもんを見てその感想は少し変わった。いや、解像度とは直接関係ないかもしれないけど、CGの連動による立体的な演出や、キャラクター以外の背景やサブキャラクターなどのリアル系な造形、細かい質感の書き込みっていうのは、たぶん昔のテレビや低解像度前提の世界ではやっぱありえないんじゃないかなと思って、それが例えば映画のポケモンよりもしっかりしっくりと来ているこの新作ドラえもんは、なんかやっぱ新しい手触りと感覚をもたらしている気がする。(とは言いつつ、見たのは自宅のブラウン管なので、ハイビジョンでもなんでもないんですけど)。


あと、キャラクターの位置関係もけっこう変わってる。昔のドラえもんは、のび太はとにかくダメな奴&泣き虫で、それをお母さんみたいに万能で愛にあふれたドラえもんが何とかして、何とかしてもらっているうちにやっぱ自分でがんばらなきゃって自立するっていう構図。静香ちゃんは同情的、スネオはシニカルで、ジャイアンは暴力的。でも新しいドラえもんは、のび太は仲間外れで虚言症気味、ジャイアンは暴力的ではなくパワフルなイメージで、静香ちゃんはのび太への想いが一切ない、すごい遠い存在の女の子。ドラえもんはお母さんの視点と言うより、のび太と一緒になってあたふたする兄弟ぐらいの位置まで降りてきていて、四次元ポケットを持ちながら、その大半が故障中だったり、なくしてしまったりと、全然効率よく問題を解決してくれない。どこまでも「ツール」と「そのナビゲーター」と言った感じだ。だから仲間の団結がとにかく早い。団結しないと前に進まないんだもん。怠け者で中流な小学生が「のび太にはドラえもんがいて楽でいいなぁ」ってあこがれる存在になってないところに大きな違いがある。


定番をアップデートするのって、すごい批判が付きまとうかなりリスキーな作業だと思う。でも新ドラえもんは、おおらかな意味でのドラえもんらしさを壊さずに、それでいて作り手の考える新しさや提案がたくさん感じられて、それがオトナの都合のようにいやらしく感じられないのがとてもよかった。家族で見ることももちろんお勧めできるし、オトナの鑑賞にも堪えうるいい作品に仕上がってると思います。75点。