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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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オキワナの旅(後編)


うーす。新年早々サイト更新と大掃除っていうのもどうなのよ。やることないの? 超ありません。飯は2日前のカレーだし。毎日近所のファミコン屋に出かけては福袋の隙間を指で広げて見たりしてます。今日は沖縄旅行日記の完結編です。もう読む方もうんざり。どんぞー。




最後の日


8時過ぎに目が覚めてとりあえず最初にカナの鼻を豚鼻にした。外は薄曇りで風が強そうでちょっと寒そうだった。ホテルをチェックアウトして、首里城に向かった。天気はどんどん良くなってきて、昨日より暑いぐらいだった。首里城は割と最近、復元されたんだそうだけど、おいおいホントにそんな建築だったのかよーって突っ込みたくなるぐらい、なんか変な造りの再現だった。赤い色も漆っていうよりなんだか品のないペンキっぽい赤だし、城壁も昔のままの部分はすごくいろんな大きさの石を組み合わせて積み上げているのに、新しい部分は機械で切り出した画一的なブロックになっていて、文化遺産の復元ってそういうものなのか?って正直に疑問だった。最初の首里城を建てた人が見たら確実に怒ると思う。だってなんか大道具みたいなんだもん。天井が意外に低くて敷居に建つと頭がついてしまう高さだった。お城ってもっと贅沢に空間を使うものだと思ってたのにフツーの家屋の尺なのね。城の周りに生えていた大きな木がとってもいい感じだったよ。


車に乗って国際通りで降りた。3匹の猫が道ばたでひなたぼっこしていたのが可愛かった。昼ご飯をどうしようかと迷っていたら、フレンチレストランがちょうど店を開けるところだったので「いいですか?」と聞いたら、何だかやる気がなさそうな22才ぐらいの女の子が「えーと、あと5分ぐらい? 掛かるかなぁ」とか人ごとのように言うので、なにやら良くわかんないけど、おみやげ屋をちょっとのぞいてから入っていった。店は古い造りで一番奥のいい席に案内された。ランチを二つ頼んだ。どうでも良さそうに返事をしながら女の子は注文をこりこりと紙に書いた。沖縄の人がしゃべる標準語のイントネーションは片言の外人のようだと思った。テーブルごとにご意見帳みたいなのが置いてあって、カナがラブホテルみたいと笑った。中身を見たら「今日は○○君と来ました(ハート)」みたいなのがずらーっとならんでいて、ホントにラブホテルみたいだった。できあがってきたチキン料理はすごくおいしくて、シャーベットとコーヒーとスープとサラダとライスまでついて800円という訳の分からない破格だった。ご飯がちょっとべちゃっとしてたのが珠に傷だけど、かなり満足だったと言えよう。カナがトイレから帰ってきて何やら笑っていた。訳を聞くとトイレにもご意見帳があったんだそうだ。「しかもね、書いてあることがほとんど全部、店員の愛想が悪い、ごはんがまずいばっかなの。意見を書いても反映されてないやん!」。僕も笑った。


車に乗って、会社の後輩が薦めてくれた鍾乳洞を目指した。玉泉洞王国村ってとこだ。えーと読めません。ぎょくせんどう? 東洋一美しい鍾乳洞だとか。天気の良い道中をガンガンに音楽をかけて飛ばした。気持ちいい。着いたらかなり広そうな場所でびっくりした。車庫入れがちょっと慣れてきた自分にもびっくりだ。バックがうまく決まると気持ちいいな。鍾乳洞はきっとひんやりしているに違いないと思い、カナに「上着を持っていっておけよ!」なんて威張って見せたのに、実際入ってみたらサウナかよ!ってぐらいの熱風と蒸気が入り口から吹き上げてきた。眼鏡がすぐに真っ白に曇った。かっこわるい。中はさすがに東洋一と言うだけあって、信じられないくらいの規模の鍾乳洞が広がっていた。まるでそういうテーマパークなのでは?と疑いたくなるほど、鍾乳石の種類が豊富で見せ場もありテンポもよかった。だって1ミリ伸びるのに何百年も掛かるって話しなのに、僕の身長より長い鍾乳石が無数に生えてる。で、しかも、観光客を無理なく歩かせるために、通路の上下の鍾乳石は惜しげなく水平に切り落としてある。いいのか? ただ一つだけ知らなかったことが。もうなんつうか、出口までの距離がむちゃくちゃ長いんだ。1キロ以上。いくら平坦に整備された道とは言え、くたびれました。そして正直言うと後半は飽きてました。てへ。


やっとのことで鍾乳洞を抜けると植物園が待っていた。いや、もうおなかいっぱい。何も見たくない。休ませて。冷たいものでも飲ませて。そう思った瞬間に、サービスカウンターが目の前に現れました。うーん、作戦にはめられてる。カナが走っていって、変わったフルーツを食べたいと言い出した。もちろん価格は観光者向けの高ーいの。ニコニコした顔でドラゴンフルーツとスターフルーツのスライスを掲げてカナが帰ってきました。そして数十秒後に渋い顔に。「まずー!!」。真っ赤なドラゴンフルーツは味のしないキウイみたいで、スターフルーツはなんだか花の蜜のような味だった。昆虫なら好きかも。僕は顔は昆虫似だけど、そんなに好きな感じじゃなかったです。でも果物自体久しぶりなので潤った。そんなにうまいフルーツだったら東京でもフツーに売ってるはずだっつうの。カナは全部食べないで残してやんの。


植物園をそそくさ抜けて、畳の上でぶくぶく茶を飲んだ。いろんなお茶が混ぜてあって、泡立ててあるお茶だそうだ。作法はないからみんなで仲良くなれるように気ままに飲むのが良いんだそうだ。まぁ普通のお茶の味だったけど、落雁をかじりながら日当たりの良い畳の上で飲むお茶はおいしかったよ。庭には花が咲いていて、外人の子供達をおばあちゃんが写真に収めていた。


そのままハブ園を駆け足でのぞく。いろんな国のヘビが所狭しと展示されていたけど、どっちにせよヘビです。あんまりじっと見たくなるようなものじゃないよね。マングースコブラのショーをやっていたけど、戦うわけじゃなかった。当たり前か。コブラも毎回殺されてたらたまらんよな。コブラは威嚇の時以外はフツーのヘビの形をしていた。そして怒ると頭の後ろが全然見えていないようで後頭部からビンタをくらったりしていた。外人がそれを見て大笑いをしていた。


車に戻ってガイドブックを見て、すぐそばの奥武島(おうじま)に船の底をガラス張りにして熱帯魚なんかを見せてくれるという「グラスボート」に向かう。到着すると受付以外誰もいなくて、ちょっと不安になったけど「今、ちょうど出るところだから急いで」の声に言われるがままにチケットを買って乗り込む。32才ぐらいの女二人旅のお客さんと向かいの席に座って船底をのぞき込んだ。船底からは透明度97%という透みきった海が見え、珊瑚礁、熱帯魚、鯛やナマコなんかが見えた。新しい魚群が現れるたびに船長は、あの魚はフライで食べるとおいしい、とか、通は塩水をつけて刺身にするんだとか、食欲の話しばっかりしていた。水族館と食欲が結びつかない僕だったけど、食物連鎖の中にない観賞用の魚なんてそもそも存在しないわけで、生活と、商売と、食欲が有機的に繋がっているこのおじさんは、きっと幸せなんだろうなと思った。ちょっと船酔いしたけど。


夕方が近づいてきて、そろそろレンタカーを返さなくちゃいけなかった。腹ぺこなのにまた食事を出来そうなところが見つけられなかった。道中、沖縄平和記念堂で降りた。売店はたくさんあるのに、売っているのはブルーシールのアイスクリームとかき氷ばっかりだった。フランクフルトとか食べたかったんだけど。広い芝生が気持ちよかった。


たった3日間いただけなのに、もうファーストフードが恋しくなっていて、やっと見つけたファーストキッチンハンバーガーを食べた。大きな通りの店なのにお客さんが全然いなかった。おなかをいっぱいにして、近くのトイザらスをちょっとだけのぞいて、空港に向かった。時間が結構ギリギリになっていたのに、大事な道を間違っていまい、どんどん空港から遠のいた。なんとかUターンをして無事レンタカーを返却。空港まで送ってくれたけど、まだ出発まで2時間以上残ってるのだった。どうしろっていうんだよ。


おみやげ屋を見たけど特別欲しいものがなかった。カナはちんすこうを買っていた。僕は自分用のかりんとうを2種類買った。土曜日だからファミ通でも買おうかと思ったら、沖縄だから先週号しかなかった。本屋の本棚を隅から隅まで眺めて菜摘ひかるの本を買った。もちろんしんどい内容だった。カナはとなりでアドバンシュの「サンサーラナーガ」をずっとやってた。そういや来るときの飛行機もずっと「サンサーラナーガ」だったな。あんまりおなかがすいてなかったけど、やることがないのでスパゲッティを食べた。カナはオムライス。カナはオムライスが大好きだ。


やっと待合室に入れる時間になってゲートをくぐったら金属探知器に3回連続引っかかった。体全身をくまなく触られて、警備員に「(ドクロの)バックルがでかすぎますね」と言われた。カナがそれを見てゲラゲラ笑っていた。いいじゃん、ちょっとぐらいでかくても。


飛行機が来たときのものより小さくて不安になった。新幹線みたいな狭さ。案の定、離陸からしばらくはふわっとした嫌な揺れが続いた。手の平が汗でびっしょりになった。カナはうとうとして、何度も頭を肘掛けにガツン!と音がするくらいぶつけていた。肩に上着を掛けてあげた。羽田に11時過ぎに着いて、走って電車に乗った。向かいの席に座ったカップルもトランクに「沖縄」のラベルを付けていて、僕らと同じ駅で降りた。2日ぶりに帰ってきただけなのに変な違和感があった。深夜なのに人が多すぎるし、なんだかみんなそわそわして見えるし、冷蔵庫みたいに寒かった。生きるってことは物事の効率を良くしたり、便利を極めたりすることじゃないなってことだけがはっきり分かった。CPUの処理速度や、ユニクロのコストパフォーマンスの高い服とか、ADSLとか、コンビニとか、携帯電話とかじゃない、生きること自体が目的になるくらい、生活らしい生活をしようと思った。家に戻って冷え切った部屋でエアコンをガンガン回したけど、あの暖かさにはほど遠かった。冬は沖縄に帰りたいなと思った。