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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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オキワナの旅(前編)


オキワナに行って来ました。超格安旅行。ホテルの部屋は高層階のキャッスルツイン、レンタカーが借りっぱなしに出来て、そんでもちろん飛行機。2泊3日で32000円。どれひとつとっても予算オーバーじゃんな。沖縄は今、観光客がいなくて大変なんだそうな。でもどうなんだ? 人が来なくて赤字なのと、来てもらってやっぱり赤字なのと、どっちがいいのかね。従業員をお客が来ない間、辞めさせるわけにもいかないから、赤字はかさんでも仕事があるかないかは結構重要な問題なんだろうな。



最初の日


羽田空港についたのがギリギリ! 空港ってどこに何があるか分かってないとめちゃくちゃ広い。あちこち駆け回ってほとんど飛び乗るようにして飛行機に搭乗。っていうかさー、沖縄に行くのも初めてってことで今回の旅行の中身自体も期待してるんだけどさー、飛行機! これ僕、赤ん坊の頃に乗ったきりだったんですよ。航空会社はJAS。安い飛行機っつうのは、飛行時間は変わらないんだけど、例えば搭乗ゲートをくぐってからバスに乗って、空港のはずれの飛行機まで5分ぐらい掛けて移動しなくちゃいけないんだね。そう言うところに料金の差が出るんだなー、と初めて知った。JALなんかは建物からやっぱすぐに乗れそうに見えたもんね。同様にスチュワーデスもイマイチ格が下がったりするのかしらと失礼にも思ったんだけど、うわ! き、綺麗だ!


飛行機の感想はとにかく怖かった。離陸が怖い。目茶怖い。だってさー、僕は自分が体感した最速のスピードって車で体験したせいぜい時速150kmが限度なんだけど、飛行機の離陸から高度9000メートルまではずっと加速。時速1000km近くまで加速。当たり前だけどF1より早いわけでしょ。飛び立つ瞬間までの地面から伝わる振動とか、気流が安定する高度までの風の影響とかにいちいち冷や汗&鳥肌。いや、どうせ駄目なときは駄目なんだからってわかってても全然怖い。足が地に着いた感じがしない。真っ青な顔色でおどおどして、表情がなくなって、できれば今すぐ地面に戻して!って気分。絶対宇宙旅行とか行けないなって思った。でも機体が上昇していく中で、眼下の街や波が立体感を失い、やがて一枚の大きな絵になって、白い雲を突き抜け雲海の上に出てしまうと、やっぱり感動してしまった。空の上にいるなんて信じられなかった。雲にはいろんな形や質感の違いがあって、天空のそういう大陸のようでもあった。目を細めて白く輝く雲を眺めた。飽きる間もなく着陸態勢になった。着陸に失敗するから飛行機事故なのに、減速、着陸の衝撃やなんかは少しも不安にならなかった。地面に帰ってこれて安心したって気持ちが大きかったから。


那覇空港に着くと薄曇りだった。十月ぐらいの温度だ。一緒に降りた若い夫婦が「いつもこんな天気やな」とつぶやいた。レンタカー会社の人を見つけて、少し離れた場所にワンボックスで移動すると、車を貸してくれた。紺色のLogoっていう車だった。何でか知らないけど、沖縄のドーナツをもらった。車の運転は実に3年ぶりぐらいで、免許取得後の車の総運転時間もまだ十時間にも満たない僕は、まず車の運転を思い出すことから始めなくちゃいけなかった。ほとんどパニックになっている自分がよくわかって、それでも道に車を出せるのは僕しかいなくて、まー、保険も入ったから、人身以外の大抵の事故は大丈夫というのはあったけど、ものすごい緊張だった。どれくらい緊張したかというと、右足でアクセル、左足でブレーキを同時に踏んじゃうぐらいやばかった。車はしゃっくりをしたようなひどい挙動を繰り返した。右足だけでペダルを踏むことに気づくまで三分近く掛かった。


少しばかりまともな運転になり始めて、やっと自分の空腹に神経が割けるようになった。カナがガイドマップを見て「ゆし豆腐が食べたい」と言ったので、その店に行った。僕は体が強くないので、長く乗り物に乗った後なんかはとてもじゃないけど食事ができない。でもその豆腐料理と焼き魚のやさしい味は、ぐんぐん食欲を奮い起こしてくれた。僕はすぐに元気になった。


食べ終わって近くの公園を歩いた。天気が良くて、空の青い色や空気の匂いや湿り気が東京とは全然違うと思った。そっか、沖縄かぁ。たった数時間で日本の南端にいるなんて不思議だな、と思った。公園で車庫入れの練習をして、ずいぶん車が怖くなくなった。ガイドブックを見て近くに世界遺産があることを知り、そこに行くことにした。


訪れた世界遺産斎場御嶽(せーふぁうたき)と言って、琉球開闢の始祖、アマミキヨが作ったという琉球一の霊地だ。あぁ、もちろんガイドブックの丸写しさ。でかい岩場と森のようなところがあって、夕方にさしかかった時刻だったこともあり、湿った空気と岩場に複雑に絡まる何かのツタや、びっしりとむした苔なんかを見ているとちょっといい感じの精霊とかが見えちゃいそうなそういう意味での気配感を感じる場所だった。学生っぽいひとが岩場を写生していた。最奥の祭壇のような場所からは木々の額縁の向こうに海が望めた。まだ最初に訪れた場所だって言うのに、なんだかうれしい期待が胸の中に広がっていくのが分かった。


日も暮れたので予約したホテルを探した。若干郊外にあるホテルだったので探すのには骨が折れた。案内された部屋は16階の割と豪華な部屋で、僕のおじいちゃんが市長をやっていた時に東京でよく泊まっていたホテルの部屋より格が上のような気がした。間接照明が4つぐらいあって、セミダブルのベッドと大きなソファが2つずつあった。広い窓はラウンドしていて、下界を見渡すことが出来た。パソコン用のモジュラージャックもあったし、セガのテレビゲームもあった。僕らは荷物を置き靴を脱いで、慣れない広さにそわそわした。ホテルの周りで食事がしたかったけど、歩いて行けそうな距離にはなんにもなさそうだったので、あきらめてホテルのレストランでドリアを食べた。ガスランプがすべてのテーブルにあって、窓から望むテラスには電飾が絡めてあった。満腹になって部屋に戻ると車を運転する緊張がやっと解けて、お湯を張った風呂に入るのさえ間に合わないぐらいぐうぐう寝てしまった。(つづく)