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松崎ナオ・ライブ「THE LIGHT」


マンスリーライブ「月々で虹」第3回でテーマが「光」。1回目が「赤」2回目が「水」と来ての3回目です。前回の「水」がチケットを入手できなかったため、2ヶ月ぶりのナオちゃんです。赤(激しさ、情熱、血のイメージ?)じゃなくて、水(清々しい、なだらかな、純粋さのイメージ?)じゃない「光」にはどんな曲(やアレンジ)が並ぶのか、すごい興味があった。最近のナオちゃんの曲には昔の夜っぽいイメージから、レコードのタイトルに使われる単語だけをとっても「雨待ち人模様」「月と細胞」そして「虹盤」とどんどん光量を増して、ついには「太陽」というシングルをリリースしたぐらいなので「光」という今回のテーマは大変重要で象徴的なキーワードであると思えるのです。


1)花魁(おいらん)

アルバムにあるようなわかりやすいバンドサウンドではなく、トランスっぽい長い長いSEにゆっくり被ってきた心拍数と同じぐらいのドラムの上にしんみりとしたメロディを乗せるだけの幕開け。短い花の命を刹那的な美しさを歌い上げている感じ。曲の前半はステージからのライティングで、ナオちゃんの姿は逆光の中の黒いシルエットだった。


2)passin' away

その単調なドラムが一転して派手なドラムソロから人力ドラムンベースに変貌、よりシンプルに骨太なアレンジになって光の色がひとつずつ増えていく感じ。今回のライブはドラムのボリュームが大きく、リズム+松崎ナオのメロディラインというような印象。タイトでありながらモチモチっとしたリズムが最高に気持ちいい。様子をうかがうように少しずつキーボードやベースの音が加わっていく。


3)月と細胞

「月と細胞と」のバージョンに近い、浮遊感のあるアレンジ。ドラムとベースもループのような演奏。90年頃のハウスっぽいリズム。適度にゆったりした感じが、今までのライブのしんどいぐらいの緊張感(緩急)とは異なり、聴いていて単純に楽しいし気持ちがいい。自然に体をそのリズムに委ねながらライブって楽しいなーって思える感じ。最後にピアニカを吹いていたけど、そのゆったり感の中でちょっとだけ余計な感じがした。


4)白夜の音

アルバムとは異なり、こちらもゆったりしたアレンジに。真夜中のちょっとした狂気という感じから、11時半ぐらいの普通の夜のイメージに。結果として一番最後のパーンと弾けるところが対比により強調されすごく効果的に感じた。痛々しさが減り、メッセージが届きやすくなった感じ。聴きやすくなった。


5)天使の悲鳴

パイプオルガンのようなフェイドインから、行き急ぐようなシンバルのチキチキいう音。一気に切迫感が強くなる。アルバムより痛さが増し、鋭い感じになった。胸がギュウっと締め付けられる。今までの4曲を流して聴いていたら、突然痛い目に遭いましたみたいな感じ。


6)True Colors

指先でつま弾くピアノの弾き語りから、徐々にドラムの反響音と小さくパイプオルガンのような音が加わって行き、経験したことのないデジャブというか、見たことのない懐かしい景色を見るような感じ。6月の坂道を自転車で下って二人乗りで海に行くような絵が見えましたね、僕は。んー、鎌倉かな。眩しくて白い白い景色。


〜MC〜

光というのは目に見える日と見えない日があってライブはそれが特によく見える場所であり、私のイメージとしてはテーマに沿ったものであるというよりは、ここにいる感じがもうテーマに沿っていて、私たちがこう楽しんでやっていることがそのまま伝わってもらうと、とてもすばらしいと思うんですね。今日は比較的静か目なのでより静か目にしようと思って新しい曲、タイトルとかもまだないような曲をやろうと思います。



7)それだけのこと(新曲)

ピアノのよる弾き語り。静かに歌っていたが、すごくポップで明るい曲になりそうな、とても上昇感のある曲。虹盤以降の成長を明らかに感じさせるシンプルな強さ。早くレコーディングとしてイメージを定着させた完成形のものを聴いてみたいと思った。シングルになるといいな。


〜MC〜

今の曲は「それだけのこと」ということにしましょう。続けていいですか? 次の曲は、これも新しい曲で今のところ「つながり」といいます。曲名というのはテーマで、テーマが変わる訳はないんだけど、たまに格好を付けたくなると変わることもあるんですね。


8)つながり(新曲)

ピアノのよる弾き語り。この曲もアップテンポで始まり、うれしい期待に胸をときめかせると、突然、悲しい曲に転調する。サビが終わる頃には、何かを悟らせるような重い響きを胸に刻み込む。昔を何度も思い出して胸を詰まらせる、というような内容の詞だった気がする。


〜MC〜

この曲は、今の曲は私的にはあるアーティストの人のもの真似をしているんだけど、気づいてもらうまで言わないようにがんばろうと思っています。


9)風になる

ピアノによる弾き語りから、ドラマティックにドラムとキーボードが加わり、再びステージに色みが増えていく。高い天窓から漏れてくる日差しを思い浮かべる。今回の選曲は、取り戻しようのない過去の自分を思い浮かべ、今の関係性を問い直すという類の、内面的な詞が多いことに気づく。


11)くやしい海

その内面世界を紡いでいくように、ボサノバ風のこの曲へ。器用にパーカッションを叩きながら歌う。5月の海の水平線を眺めているよう。肌寒くて、でもどうしようもないくらいキラキラしてる。眩しさに目を細める。顔を見合わせて泣き笑い。


12)Last Flower

同じくパーカッションから、まさかのこの曲。アルバム「正直な人」では1.2を争うぐらい思い入れのある曲なのですごくうれしかった。寄り添うようなキーボードがものすごくやさしい。夏の雨に包まれているようなそういう温かさ。


〜MC〜

メンバー紹介  ドラム:ミヤガワツヨシ  ベース:イワセタカシ キーボード:ホソミサカナ(?) ライブも後半戦です。派手な曲とかで盛り上がっていきましょう。


13)平坦な戦場

今までの選曲やアレンジの柔らかい感じとは一転して、血生臭いギターをかきむしる。最近のライブではよくこの曲を聴いている気がする。「電球」と並んで古く痛い頃のナオちゃんの代表曲なのかな。珍しく感情をむき出しな上に否定形な詞の感じが怖いのでちょっと苦手です。光にいろんな種類があるとしたら残酷な光。


14)ココロのオト

ドラムのモータウンビートっていうのかな。よく聴くあのテンポに、ナオちゃんがピンク色のおもちゃの縦笛でピエロのようなでたらめメロディを吹いたと思ったら、この曲に雪崩れ込んだ。毎回出だしが違うけど、やっぱり最近よく聴く気がする。曲調としては盛り上がったけどやっぱりちょっと古い感じ。最後にまた魔法の笛。


15)How to be a Sun

そのぴーひゃらーっていう笛に被るようにドラムのリズムが変わって、この曲へ。サビの部分でおもちゃ箱をひっくり返したみたいにリズムがドコドコ走り出してパッと止まった。2周目はジャズっぽいリズムになってサビのリズムが、どっしりねっとりしたグルーヴに。遊び心たっぷりなギミック盛りだくさんです。そして音楽隊は大団円を迎える、というようなバンドらしいラストで、おしまい。


en)鳥が飛ぶ意識

今日の勝負曲として演奏されたのが、久しぶりに聴くこの曲だった。弾きにくそうにギターを奏でてました。そんなに古い曲じゃないのにこれもなんか懐かしい感じだった。


感想としては、静かめに構成された中盤までの流れが最高に良かった。ギターではなくキーボードをメンバーにしたお陰で、切れのよいリズムの間を満たすように柔らかでやさしい印象がなんとも「光」だと思った。それに引き換え、終盤の昔の曲はアレンジは派手で豪華なんだけど、光が弱い気がした。中盤の新曲2曲の弾き語りは、メロディだけでもシンプルな輝きを示す松崎ナオの作曲センスがもっとも輝いたパートだった。虹盤の感想の時も書いたけど、音のギミックなんかは減らして、メロディが本来持っているシンプルな強さを前面に出していけばもっともっと輝けると思った。僕が見た彼女のいくつかのライブの中で新しい方向性を明確に見せてくれた初めてのライブだった。これに「哀しみが止まらない」と「ひとつの果て」が選曲されていたら、もう言うこと無しだったのになー。なー。