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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

  ラヴフール(www.lovefool.jp) 

本とオンライン


世の中にどれだけ「本」という触れるカタチのテキストで記録されたものがあるのか知る由もないですが、僕の日々の戯言さえ、日本語環境が整ってさえいれば世界中でご覧頂ける現在、「本」というカタチが絶対的に必要なものってあるのかしら、と思うことは日常結構頻繁にあります。新聞も取ってないし、パソコン雑誌、ゲーム雑誌も買わなくなった。もう「鮮度重視な情報誌」は、その情報の確かさは割とやふやながらどんなにがんばってもオンラインのスピードには勝てっこないよね。


ゲームに行き詰まれば、例え真夜中だってグーグルで検索→数分後に解決。たった1ページに書かれた記事の為に1000円前後の売り上げが見込めた出版社はここでも売り逃し。辞書や図鑑のような、あればあったで便利だけど、いつ必要になるか分からないし、そのほとんどが一生縁のない情報だし、必要ない時の方が圧倒的に多い、ランダムアクセス系な知識も、部分更新や追加が簡単で、掲載される情報の量に関わらず場所を取らないオンラインの方が多分好都合。紙に出力したモノより立体的な検索もできるしね。


じゃあ「本」や「紙」として残るべき情報の種類ってなんだろう。ひとつ思いついたのが映画のパンフレット。映画は触れないモノなので、気に入った作品に、よりお近づきになりたい気持ちを物質化して手元に置いておきたい感じはよく分かります。ジャニーズ好きな女の子が、実際に触れないジャニーズ自身ではなく、グッズを買いあさるしかないっていうのと同じ構図ですね。あれはオンラインじゃ意味がない。好きな作家の本はここに入るかも知れない。


もうひとつは、スクラップブック。新聞や雑誌を切り貼りして、手で触れることで情報の価値を確かめる、あるいはコラージュのように1+1=2じゃない価値を生むって種類の情報。これからブロードバンド化がすすんでどんなに回線を太くなっても、ブックマーク管理、ページのダウンロードという階層化された概念じゃなく、おもちゃ箱をひっくり返した時に生まれる偶然の「いい感じ」を、偶発じゃなく自分である程度組み立てられる人には、画面上でそういうことが簡単に出来るツールがまだないせいもあるけど、それがあってなお、出力→製本化したいんじゃないかと思います。それは他に比べるものがなくて、自分の中から対外化したい(触って他人として確かめたい)情報だから。


あと楽譜。あるいは設計図。読むだけならオンライン上にあることはすごくいい感じなんだけども、実際それを必要としている人は、それを自分色に染め直したり、自分に分かるように注釈をいれたりする作業が発生するはずなので、それが実体化して紙になっていた方がいいんだろうなと思います。それを持って人前で説明したり相談したりする機会も多いはずだしね。パソコンで図面を引いても、業者に渡すのはフツーに紙だったりするのは、やっぱその方が都合がいいんだよね、多分。


最後は証書か。これがオリジナルですって言わなきゃいけないもの。レシートや契約書。ま、これは本にするもんでもないんでほっときましょう。


数年前、会社にパソコンを導入させるときの謳い文句は「社内オンライン化はオフィスから無駄な紙ゴミをなくして、業務を効率化させる」という指針だったはず。でもこうやって紙にしておいた方がいいものを並べると、会社で取り扱う種類のものはほとんどオンライン化の恩恵を得ていないことがわかる。上司に注意された書類ミスを訂正する時間は短くなってもミスプリントで使う紙の枚数は何倍にも上がってる。むしろパソコンなんて生活に関係ないや、と思っていたフツーの学生やサラリーマンの方が紙をどんどん減らしてるように思います。誰も出版業界がやばい!なんて言ってくれなかったのにね。


これから映像や音声に関しても同じようなパラダイムシフトがやってくると言われている。オンライン上で映像や音声を買って、その複製化が出来ないようにレコード会社や映画会社が幾重にも複雑なカギを掛ける。まぁ、商売なんでそういうのも大事だとは思うけど、オンラインじゃ意味がない情報の価値をちゃんと把握しないで、「ブロードバンドがやってきた! いつでもどこでも映像!音声!」みたいな、器の在り方ばかりにココロを奪われているとまーた危ないよなぁ、と思った。