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CD「月と細胞」松崎ナオ

月と細胞

月と細胞

松崎ナオの1年ぶり?のニューシングルが大変よかった。なんかいろんなところで最近のナオちゃんは元気がないと聞いていたので心配していたんだけど、ディスクに詰まっていたのはそんな心配も吹っ切れるような新しく懐かしい紛れもないナオちゃんだった。

生まれて来てから何度月を見たのだろう

そんな歌い出しで始まる「月と細胞」は、前作「雨待ち人模様」の延長線上にあるギターをメインにした痛み系の曲だ。子供の頃からいつもそばにいるようで、でも触れたことのない(手の届かない)月という存在をモチーフに、叶わぬ恋と不安と距離感を噛み締めるという歌。忘れようとしても月は窓からやさしく光を注ぎ、忘れることなんかできっこない。痛みとの共存を目指すうちにやがて外側ではなく自分の内側にも、月が存在していることに気づく。やさしく甘い色の月を自分も持っているって事に気づく。届きたい、近づきたいばかりに泣き叫んでいただけの日々を今は懐かしく思う、というような内容でしょうか。単に痛みを一方的に発信してわめくだけで終わらないやさしさをあらかじめ持っているところが、松崎ナオの素晴らしいところだと思う。とんがった部分を持ちながら全体的には優しい印象でホッとする。もう一度聴きたくなる。アレンジ的にはサビに差し掛かるところのつんのめり感がすごくかっこいい。鳥肌が立つ。


カップリングの「くやしい海」も新境地。距離感のいまいち微妙な二人が海に行くって歌。照れ隠しに目隠しなんかしちゃって、好きになってよ、好きになるよとか言うの。いやーん、いいな。

海を愛するあなたと山を愛する私がいる それは些細な違いですね

って歌詞だけで僕なんかうなっちゃう。かなり伝わってないと思うけど。これも一度聴けば口笛吹けちゃうぐらい印象的なメロディ。今までのうちで3曲目ぐらい?っていう明るい光を感じるアレンジがステキだ。海面を踊る光や、夕暮れの色、二人の間の曖昧な潮風とか、まつげとか、悲しいような笑顔とかがばーっと蘇る。こんな気持ちになるお話だったら、僕もまた書きたいな。もう一曲は「欠けてる人」という1分ちょいの小曲。最後の歌詞、

君を乗せた船なら ボクも揺れるさ

っていう切なさとやさしさが溢れた言葉に絶句。すんません、もうしばらく僕だけのナオちゃんでいてください、と本気で思った。また会いに行くよ。