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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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軽薄短小


これからは「軽薄短小」だと、任天堂の山内社長は言ったのです。2年ぐらい前かな。一般的なマスコミには、プレイステーションにシェアを大きく奪われたニンテンドウ64だけど、携帯市場はゲームボーイが譲らないよっていう文脈で理解された。でも、それはそういうことだけじゃなくて、再三いろんな人や僕が言うように、もうテレビゲームと一対一で向かい合う時間や手間やそのための資金が、5年前とは比べものにならないくらい減っていることを見越しての発言だった。携帯電話の爆発的な普及によって、学生のお小遣いはほとんどNTTのものになっちゃった。CDもゲームも映画も、国民的な娯楽超大作以外目も向けられなくなってしまったし、最近ではコンビニさえ売り上げを落としていると聞く。家にいても会社にいても電車の中でもメールの返事は書かなきゃいけないし、書いてるそばから新しいメールが届いたりする。毎日チェックしなきゃいけないサイトや、掲示板の書き込み、下手すれば自分のサイトの更新もあるわけで、つまり暇時間の絶対量がどんどん減っているのだった。


i-modeが滑り込んできたのは、その「通話」や「メール」の生活必然が細切れにした時間の断片を、脆弱ながらも車内広告よりは面白いかも知れない「エンターテイメント」で、24時間という限られた時間の中の、もっとも浮いた暇時間の断片まで全部さらっていってしまったっていうこと。それこそが山内社長のいうところの「軽薄短小」を実現化したもののひとつだった。


それはそうと、さくっと楽しいゲームが少なすぎ。僕は月に3本程度ゲームを買いますけど、とてもじゃないけどロールプレイングゲームやシミューレーションは降参。昔の20時間程度のものならがんばって毎日寝る前にやって、ひと月でクリアー!って出来るけど、最近のは普通に解いても700時間前後が目安だったりするから、3、4ヶ月もやっている内に最初の方のストーリーとかどんどん忘れてしまって、今持っている剣が武器屋で売っているものとどっちが強いのかわかんなくなるし、ストーリーが中だるみになると「なんでいちいち戦わなくちゃなんないんだよ!」とか怒り出したりする。つうかつき合ってらんないよ、単純に。だって、仕事もデートも忙しいんだもん!


僕の好みはさておき、ゲーム機が子供のお小遣いじゃ買えない値段の今、やっぱりゲーム業界のお客さんと言えば、すなわち僕らヤングサラリメン。だけど携帯電話やノートブックパソコンにうつつを抜かしているので、年に一回「ファイナルファンタジー」をやって、「どこでもいっしょ」みたいな女の子受けするのを彩りとして揃えたりっていうのが一般的のような気がする。最後までやっている人が半分以下なのは絶対目に見えてる、多分人気ドラマを見て友達と話題を合わせるぐらいの認識なんじゃないか。でもファミコンの頃ってもっとサクサクと楽しいゲームが多かったし、その短くて濃厚な快感が忘れられなくて、繰り返し繰り返しゲームに没頭していったように思う。つまりゲームは今の携帯電話がまとめてさらっていったような快感をもともとは持っていたってことを、業界の人は技術の急激な進歩に伴って忘れちゃったんじゃないかって思うのね。


でもそういうことに気づき始めたのが、最近のドリームキャスト。「シーマン」「スペースチャンネル5」「チューチューロケット」「クレイジータクシー」はどれもワンゲーム15分前後で終われる昔ながらのゲームの快感がばっちり詰まった作りになっているし、3機腫同時発売の「ミスタードリラー」は、ファミコン全盛期を思い出させるような「ただ地底を目指して掘り進むだけ」っていう明快なゲームシステムが、たまらない達成感と征服欲をかき立てる。


ゲームの封を切って、そのゲームの全体的な操作とルールを覚えるのに15分もかからないし、核心的な快感に触れるまでの時間も1時間以内(シーマンはちょっと無理)って具合。僕なんかはお風呂にお湯を貼るまでの時間に2〜3ゲームやって、わーい!ってなれる。セーブポイントを探していらいらとさまよう必要もなければ、ボス戦に入ったばっかりに、電源を切れずにいつまでも最強の魔法を繰り返し唱えるなんて事もない。純粋な快感と征服欲と達成感、それも出来る限りミニマムな仕組みで、やり込みたい人にはちゃんと奥行きがあるっていう作り。ゲームってステキだな、うれしいなって思えるのってそういうジャンルが充実しているときだと思うのね。ゲーム機の豪華な性能はそういう骨組みの上に乗っかって、初めて生きてくるものだと思うよ。じゃないと携帯電話のサクサク感が、マニアックにしか進化していかないゲーム機の市場を飲み込んじゃう日の方が早く来るよね、間違いなく。