lovefool

たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

  ラヴフール(www.lovefool.jp) 

架空の産物


新婚さんの家にお呼ばれした。まぁ会社の後輩なんで毎日会ってんだけどさ。寮を出て結婚して会社に近い小綺麗なマンションに引っ越した。静かな坂の上に建っていて見晴らしがいい。部屋にはいるとフローリングの床、程良く個性的な家具、ちょっとだけ不釣り合いだけどここだけは気を抜きたくなかったんだろうなっていうチャコールグレイの皮のソファ、プロペラ付きのランプシェード、借りてきたネコみたいなAV機器、丁寧に畳まれテーブルの隅に置かれた新聞といくつかのリモコン。キャラクターの描かれた不揃いなコップ。まるでモデルルームみたいにモノがなくて、目線より上に家具もないし、壁には窓がたくさん開いていて外には洗濯物が仲良く揺れている。白いレースのカーテンもエアコンにそよぐ。


「がーん!」と音を立てて僕の頭の上に擬音の書き文字が飛び出した。二人のシアワセ振りはもちろんのこと、こういう部屋がちゃんと実在するってことがびっくりだった。「葉巻をくわえた社長」とか、「ベレー帽をかぶった漫画家」とか、「椰子の木が一本だけ生えた無人島」みたいにそんな完璧な新婚部屋は架空の物語の中にしか存在しないもんだと思っていたから。


でもそれは現実として存在していたのです。こんな身近に。え、何? お前くやしかったの? はい、そのとおり。つうかね、正確に言うと僕には実現できない種類のシアワセを具体的に現実的に経済的に計画的にカタチにして体感させられたのが、もうなんつうか全然負け、オレ的に。いや、実際、勝ち負けじゃないのかもしんないけど、自分が「あんまり価値はないだろう」とか「つまんないだろう、そんなのは」って勝手に見切っていたモノの中に、ちゃんと「シアワセ」とか「勇気」なんかを見つけだせる人は、それだけでものすごい才能だと思うのよ。だから負け。それだけじゃ何もできないのかも知れないけど、とにかく自力で線を引いてスタート地点に立ったって気がするもんな。理由をこねてうだうだ言ってるヤツよりよっぽど。


僕なんか「結婚」に対して昔から異常なくらい懐疑的なんで、いろんな理由付けをして「今」が一生続かねーかなーとか、サラリーマンでなおかつモラトリアムっていう最悪かも知れない時間をすごしていて、もう何が正しいのか実際よくわかんなかったりもするのだった。


会社の手帳の欄外になんかね、ことわざみたいなやつがだーって載ってんですけど、「幸福とはそれが幸福だと気付ける能力である」みたいなくだりがあって、久々に感動しましたね。あー、なんか、かったるい話しでごめんなさい。