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映画「青い春」

青い春
青い春
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ケイエスエス (2002-12-20)
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DVDで映画「青い春」を買いました。映画館で見そびれてしまったので。


校舎中に書きなぐられたラクガキ。行き場のない高校生活の苛立ち。でもその時間自体こそが限られた猶予時間だと自覚している矛盾。


かっこつける理由も薄っぺらなら、そこで交わされる一瞬一瞬の激情も薄っぺらい。でも徹底して薄っぺらいのでそれが潔く感じられる。


例えば、ミシェルガンエレファントの音楽の使われ方も、けして登場人物の感情をまっすぐには沿っていない。ただうるさい。うるささは白い校舎に跳ね返って高い青い空に消えていくだけ。その音が鳴っていない時の静けさの意味が逆に明確になる。静けさ(=目標のなさ)が怖いのだと。


物語の中で学校はすべての舞台だ。まるで学校で起こることだけが「人生」のようなそういった狭い視野、近視感が、ただの青春回顧懐で終わらせない臨場感を醸し出す。登場人物たちの学校以外の生活や家族が描かれないのも象徴的だ。「ここ」しかないのだから。


色合いもいい。学生服の真っ黒と、校舎の青白さ、空の突き抜けた青さ。乾いた寒色の中で、ほのかな彩りを与えるのは桜のピンクと血の赤だけだ。


松田龍平の演技は微妙だった。主張が良くわからないし、クールと言うにはちょっともっさりしている。無口なら無口なりの静かな迫力があるかと言われれば僕は感じられなかった。


狂言回しの主人公(つまり個性や主張はなく、観客の投影図)に対して、そこに関わる等価値のもうひとつの人生、すなわち友達の姿を描く。友達が辿る、主人公への憧れ→逆切れ→暴走→収束という道筋を考える、と話の筋は「アキラ」と似てるかもしれない。金田と鉄雄の関係だ。


この手の話はありきたりな題材かも知れない。でもそれを90分という時間でまとめたのがいい。飽きずに緊張感を保つにはこのぐらいがいい。


別に僕の高校生活なんかどこも被ってはいないけど、「青い春」を読んだ時のあの感じは、かなり正確に映像に映し出されていたと思うよ。正直「ピンポン」より面白かった。ちゃんと松本大洋の空気になっていると感じた。