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CD「YUMEGIWA LASTBOY」スーパーカー

YUMEGIWA LAST BOY
YUMEGIWA LAST BOY
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スーパーカー
キューンレコード (2001-11-21)
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スーパーカーのニュウシングル「YUMEGIWA LASTBOY」を聴いた。正直あんまりいいと思えなかった。あれだけスーパーカーに入れ込んだ僕が前のシングル「Strobolights」の感想を一切書かなかったのは訳があって、なんか悪い方向に進んでいる気がしたからだったんだよね。


最近ゲーム業界とテクノを重ねてイメージすることが多いのです。それは先人達が残した名作で再発見した「作法」を学んだ若者が新しい価値として再構成するっていうスパイラル自体はいいんだけど、あまりに同ジャンル内の先細りな感性の中でだけそれをやってませんか?ってこと。要するに閉鎖的なんだ。テクノもゲームも生活必需品じゃないし、嗜好性の高いものなんで、いろんな種類や偏りがあっていいと思うけど、その先細り感はなんだか冴えない伝統芸能をかたくなに守ってる人みたいじゃんって気がする。どこかの地方に住んでる縄文人の生活を続けてるおっさんじゃないんだし、ますプロダクトとして世に問うてみたいアイディアとしてわざわざたくさん複製したものなんだから、もっと前向きに受け皿を大きくするべきだと感じるんですよ。


テクノで訪れる恍惚には僕の中で2種類に大別される。ひとつは伝統音楽のアナログのグルーヴ感を、冷たい感触の音色(大抵はコンピューター)の積み重ねのハーモニーやずらしで再現するもの。もうひとつはすべての音素材を楽器として捉え、サンプリングとループをベースに、機械的な反復の中でグルーヴのないストイックな快感を、削り方向で積み上げていくもの。前者を「再現派」、後者を「音色派」としましょう。これねー、多分どっちも未来がないと思ってんですよね、僕は。


スーパーカーに話しを戻すとアルバム「Futurama」は再現派の音でできた傑作です。これってテクノ風味な演出を巧みにしているけど、生楽器の演奏でも再現できるでしょ。今回のシングル「YUMEGIWA LASTBOY」は音色派。テクノ成分がぐっと上がった結果、これを生楽器でやってもさっぱり面白くないつくりになってます。「Strobolights」はそのちょうど中間かな。今思うとものすごいセンスとバランスでできている曲だと痛感します。生もテクノもどっちもいけそうでぜんぜんいけない。あの曲はあの楽器のあの音以外で作ったら、それはまったく別の曲になるってくらいの繊細さ。


「YUMEGIWA LASTBOY」は明らかに音色に頼ってますね。まず響きに共感してもらうことを前提にしないと曲として成立できない。これは先週買ってつまんないと感じたコーネリアスの新譜「point」にも言えたことです。「言わなくてもわかるでしょ?この感じ、ね?」。そういうお約束でしか得られない恍惚。定石の中にだけ垣間見るマナーとテクニック。部屋の内装を決めるみたいに音の配置に掛ける異常なまでの情熱。そういう閉じたコミュニケーションに僕は荷担したくないんだよね。


音色派のテクノは共同作業やバンドでやる意味がない。だって人数が増えるほど前提にする「共感の音色」の種類が減ってしまうから。あるいはそうやって選ばれた音色はありふれた、既にイメージを持ったものの積み重ねになってしまうから。それがすごくもったいない。1+1が2やでっかい1や10になったりしないで、束縛の方向に進んじゃう。もしそのうちのひとりの自信を信じるなら、他の人の作業は全部覆さないといけない。そういう内省的な背景が見えてしまう音だと思った。


「Strobolights」の感想を書かなかったのは、この曲の先に二つの可能性があって、その一方にある不安を認めたくなかったから。望んでいたのは「Strobolights」の3曲を「Futurama」以降に容易に考えられる「音色派」への転身の可能性を、連続した3曲でやり切った小さなアルバムとして捉えることで、その先に突き進むことを先回りして自ら否定しておく(つまり次に出す作品はまったく違う切り口だよという宣言)をしたんだと思いたかったんだ。だからその次を見ないことには感想を言えなかったんだよね。だけど「YUMEGIWA LASTBOY」から聴こえてきた音は迷いだし、未練だし、馴れ合いだった。僕の中では最悪の結果になった。すべて新曲ならまだしも特に3曲目が「Strobolights」のリミックスだなんてあまりにひどすぎるよ。焼き直しや再構成で未来を食いつぶさないで欲しい。続編しか売れないゲームとは違うでしょ? こんな未来はいらない。まりんの馬鹿! LOVEBEATぐらいちゃんとカッコよくしてよ! そう思った。来春のアルバムも不安だなぁ。