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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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2001年ステキな年だったで賞


正月に切って以来伸びっぱなしだった髪を切った。やれやれ、また一つ余計にかっこよくなってしまった。途中に寄ったファミコン屋+レコード屋+古本屋で、ゲームソフトの「鬼武者」と「ガンダム」、DVDのフィッシュマンズ「記憶の増大」がそれぞれ中古で4980円(本日限り)と書いてあって、100ぺんぐらいその棚の前を行ったり来たりしたけど、近い将来に割とまじめな投資したいこの頃としては目先の事象に捕らわれている場合じゃない、と観念的な僕を登場させてその危機を突破。しかもすぐそばの棚で5年越しでずっと探してたマリマリのインディーズ時代のCDを600円で見つけて大喜び。結局目先なんだけども。


髪を切ってスニーカーを探したけど、やっぱいいのがなくて、ひとりでウェンディーズに入り、シナモンアップルパイケーキみたいな奴とシチューみたいのと、ハンバーガーみたいのを食べる。テーブルを拭いたり、トレイを片づけているおねいさんがやたらに手際よくて、しかもちょっと見ないタイプの美人だったのでしばらく目で追いかける。年齢がとにかく不詳すぎて気になる。18〜28の間だったらどれを言われても「あ、やっぱ?」って答えちゃいそう。そんなどうでもいいことを考えるのにも飽きてきて、本屋で買った漫画を読んだ。もう窓の外は夕暮れだ。新しいゲームのアイディアがぽっと浮かんだのでメモしようかと思ったけど、筆記具なんか持っていた試しがなかったのと、書き留めないと忘れるようなアイディアはあまり価値のあるアイディアじゃない、みたいなことを浜崎あゆみがテレビで言っていたのを都合よく思いだして実践。


ところで昨日一昨日とDVDを立て続けに見たんだけど、そのどれもが「2001年ステキな年だったで賞」にノミネートされそうなっつうかされまくりな、出会いになったですよ。

20世紀少年―本格科学冒険漫画 (1) (ビッグコミックス)

20世紀少年―本格科学冒険漫画 (1) (ビッグコミックス)

まず最初に手にしたのが、マッキに借りた浦沢直樹の「20世紀少年」。うわー、今更っすねー。っつうか、これから出てくる作品どれもそんな2歩遅れた感じなんだけども(毎度のことです。5歩先か2歩あとって感じね)、熱が冷めない内にこういうのは書いておかないとね。


あのねー浦沢直樹の作品にちゃんと向かい合ったのって僕初めてなんすよー。YAWARA!の頃とかHappy!の頃とかスピリッツを毎号読んでいたりしたんだけども、もうその王道っぷりな展開と、一切無駄のない絵のうまさと、リズミカルなテンポが怖くて、片目で1ページ飛ばししながらしか見れなかった。呑み込まれそうな気がしたんだよな。で、今回、マッキの薦めるところもあって、半ば仕方なく本を開いたんだけど‥ まいった。予想どおりだった。どうしてこんなテンポがよくてわくわく出来るモノを週刊連載出来ちゃうんだろう。ちゃんとしすぎてて、おもしろくって、もうなんか具合が悪くなりそうだった。3巻まで読んだんだけど、久々に時間を忘れて没頭してた。大体先の展開とかチラチラと感じるんだけど、そんな筋書き云々より、完成されてる構成力にはホント脱帽だと思った。頭の中で完成しているモノを紙に写すだけだとしたって、こんなに上手には写せないよ。器が違う人っているんすねー。そう言う意味では「読むんじゃなかった。僕の嗅覚は正しかった」と思った。

人狼 JIN-ROH DTS Edition [DVD]

人狼 JIN-ROH DTS Edition [DVD]

で次が、先輩が貸してくれたアニメ映画「人狼」を観た。みんながどんどんDVDを貸してくれるのはいいんだけどさばききれないっつうの。これは今「アヴァロン」を劇場公開している押井守の前の作品。架空の昭和20年代が舞台で、武装をした特殊警察みたいなのに所属している新人隊員のココロの葛藤を描く、と言ったような内容でしょうか、要するにアクション主体じゃない、割と小説的な心象風景の世界。これがまたよかったっすねー。もう尋常じゃない映像のこだわりや手触り感はもちろんのこと、その世界観に作り手が酔っていたりおぼれることなく、ココロの葛藤がダイレクトに伝わってくる気がした。特に人間の表情を線と一色の色で(例えば浮世絵のように)描いていたり、まだ世界が蛍光灯じゃなかった時代の日本の色とか空気のようなモノをすごく自然に感じることが出来た。ここまで理想のイメージをしっかり絵で描ききっていると、実写で映画を作らなくちゃいけない理由って言うのがどんどん見あたらなくなってしまう。「あの場面、スタントじゃなくてタレントがやってるらしいよー」とかそう言う部分にしか価値が見いだせなくなりそう。「アヴァロン」も見所あったけど、僕は「人狼」の方が映画という映像メッセージとして、素直に完成されているなと思った次第です。始まって10分もしないで、もうどっぷりとその世界の中に入り込んじゃってやばかった。息すんの忘れてたもん。劇場版「パトレイバー2」なんかがピンとくる人にはものすごくオススメな感じ。パッケージの女の子が赤いフードを被っているのは「赤ずきん」をなぞっているのかってことには見終わってからやっと気づいたよ。

度胸星 (01) (ヤングサンデーコミックス)

度胸星 (01) (ヤングサンデーコミックス)

そんで最後が山田芳裕の漫画「度胸星」全4巻。火星で消息を絶ったNASAのクルーの「未知との遭遇」話とトラックの運ちゃんをやっている実直な青年が火星探査プロジェクトに参加するという話しがパラレルに語られるSFと言った感じでしょうか。これもやばいぐらいにおもいしろい。僕は物語を紡ぐっていうのは「何かを明解に伝える」(要点はこれという収束)っていう側面の他に「なんだかわかんないけど先を見たくて仕方がなくなる」(怖いモノ見たさっていう拡散)っていう側面があると思うんだけど、これは明らかに後者の方で、もう1ページ先の予想がつかないってことの連続が、ひっじょーに大きな物語の全体の、輪郭じゃなく、手触りや影や匂いとかでいろんな角度から説明されていくっていう感じですね。しばらくするとそのドキドキがオーバードライヴして、あ、これ描いている本人にも操作しきれないドキドキなんじゃんって思いつつも、ライブ会場の興奮やなんかだって実際そうだもんなって感じで受け入れながら、一緒に坂道を転げるようなスピードで駆け下りていく感じでしょうか。もう走っているのか、落下しているのか、わからないスピード感。そういうのを楽しむ。


去年突然連載が終了して、2ちゃんねるなんかで「ヤングサンデーの新編集長の新体制による打ち切りか!」みたいな憶測を呼んで、それはそれはすごかったですよ。(参考リンクhttp://members.tripod.co.jp/dokyo_boshi/)。SFが好きな人にはさらに10倍楽しめると思うんだけど、そうでない僕でも、涙ボロボロ流しながら読んだので、きっとすごい体験が待ってると思います。はー、俺もいいもん作っていこう。そう素直に思えた、最近珍しい貴重な日でした。いいものを喰ったり、いいものを見たり、聞いたり、いい女とつき合ったりっていうのは、生きていく上で表には分類できないけどあまりに大きな意味と価値を持っているね。