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映画「ラン・ローラ・ラン」

ラン・ローラ・ラン [DVD]

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観てきたよ。「ラン・ローラ・ラン」。すごい! 楽しい!


知らない方のためにあらすじを言ってしまうと、麻薬の取引のお金を無くしてしまったコイビトのために、赤い髪の女の子「ローラ」が約束の12時までの20分間に、両替所の重役の父に会って10万マルクを用意し、約束の場所までとにかく急ぐってな話し。何がすごいって90分の映像中、60分ぐらいは走りっぱなしってとこよ。その昔タイトルバックが終わる前にもう逃げていた「逃亡者」って映画とか思い出したね。


用意されている未来は3種類、最初のふたつはうまくいかない。最後でハッピーエンド。ちょっとずつずれてく未来を繰り返し駆け抜けるローラ、そういう「if」的なパラレルワールドを息もつかせぬスピードで見せてくれるわけですよ。


彼女が走るその間、背後では速まる心臓の鼓動よろしく、ドンツクドンツクってデトロイドテクノが掛かりっぱなし。僕なんかね、テクノを子守歌に育った最初の世代だから、走る時に前に見える景色と目の端っこの方で流れて混じり合う景色をそういう音に重ねるのがすごく自然で気持ちがいい。脳味噌の伝達物質とかがあのキラキラしたCG(NHKの特番「脳と心」みたいの)でぐるぐる回りながらびゅんびゅん飛び交うのを、あのリズムは感じるんだよなぁ。脳で刻むリズム。ココロで見る風景。それは5感のすべてともう一つの何かを足した主観的な体感入力、だから突然に挿入される「場面のアニメ化」や走る途中に偶然関わった人たちを襲う「未来のフラッシュバック」(その人のその後の一生が1秒ぐらいの間に全部見える)も、野心的な映像表現の試みと言うより、もともと必要でそれをちゃんと充たしたっていう種類の演出に見えてくる。


あとメッセージとしてものすごく心を打つのが、さんざんな未来を通り越してハッピーエンドに辿り着く二人の、あまりにあまりに気が抜けちゃうようなだらっとした平和感。ほんの20分前公衆電話から「俺は殺されるんだー!」って泣きついてきた恋人に対する愛情と、命辛々繰り広げた20分間のローラの冒険、それに釣り合ったようには見えない「悲劇の起こらなかった未来」。だけどアレよ。そんな奇跡と奇跡的な気持ちに支えられて、このフヌケタ世界は、今日もゆっくりビートを刻んでゆく。そのことにちゃんと気づいておくべき。「平和すぎて退屈ー」なんて言えちゃう毎日って、どっか誰かの奇跡的な冒険に支えられても全然おかしくないと思うね。あなたの平和はどうですか?