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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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CD「PSYENCE FICTION」UNKLE

Psyence Fiction
Psyence Fiction
posted with amazlet at 09.11.08
UNKLE
Mo' Wax (1998-09-29)
売り上げランキング: 6297

洋楽を聴かなくなってここ数年という感じなんですけど、久々にざわざわ来た感じなのでリコメンド。アンクルというユニットです。


出会いは去年のスーパーカーのライヴ「SUNDAY PEOPLE'98」のオープニングSEに使っていた曲。ポロンポロンとつま弾くピアノにだるーい男のボーカルが乗っかるあの響きが忘れられなくて、いったいどこの誰の曲かと様々な方面で聞いてみたんですが、それがこのアンクルの曲だとわかり、速攻ヴァージン・メガストアで聞いてみました。すると案内されたのは何故か「テクノ」コーナー。おやー? ロックじゃないのかぁ、まあいっかと思うのもつかの間、突き出されたのは、この気の利かない物理の教科書みたいなひどいジャケット。かなりブルーな気持ちになりましたが「あらゆる出会いはかけがいがない」と思いたい僕は、目をつむってレジに差し出したのでした。こんなジャケ、自分の家に置いてあるって思うだけでいやなんですが。


ところが家に帰ってプレーヤーに掛けてみるとですよ。そこから溢れ出すのはラップや、やさしい女性ボーカルもんや、ハウスや、はたまたノイズギターや、ドラムンベースという実に多彩な音楽宇宙だったんですね。しかもその音ひとつひとつがなんともまぁばっちしな感じに研ぎ澄まされています。僕が知っている中で一番近い音を出す人たちは「マッシヴ・アタック」かな。もうありとあらゆる音楽を知り尽くして、その中で自分たちが言いたいこと、表したいことを一番適したところにふわっと乗せてあげる感じ。少なくも力強いその音の響きあいに、もう神様が荷担しているとしか思えない魔法が宿るのを僕は感じずにはいられなかったさ。


もうその時点で運命的な出会いだー!って感じだったんですけど、ちゃんと入っていたよ、探してた曲も。11曲目の「RABBIT IN YOUR HEADLIGHTS」です。他の曲もすばらしいけど、やっぱりこの曲の何とも言えない響きが印象的。ポロンポロンとつま弾くピアノにギターのハウリングや、録音ノイズ、誰かの囁き、ハイハットのリフレインが小さく小さくかぶっていくその景色は、濃い霧の中を宛てもなく進む夢を見ているようで、どこまでもニュートラルな灰色を感じます。訳詞を見てその不思議感はさらに倍増したね。「オレは君のヘッドライトにうつった兎さ。トイレに流された燃やすほどのお金。血だらけな太い指は君の魂を吸い取っている」とかそんな歌詞。なんかすげえ納得。まさにそういう感じ。伝わってたよ。


音楽文法的にも、表面上は新しいエッセンスを取り入れながらも、最近のテクノにありがちな殺人的な冷たさがなく、どちらかというと80年代初期から脈々と続く元祖テクノ世代のあたたかみを感じさせる。基礎的な勉強をちゃんとしてきた人たちの的を得た冒険といった感じ。だから音にも奢りがなく、余裕ともとれる風格と風通しがよさを備えている。これでジャケさえ違えば、何一つ文句ないんだけどなぁ。そこが愛嬌といえば愛嬌か。そんなことを考えました。とにかく聴いて。損はしないから。