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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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ゲームボーイソフト「ドラゴンクエスト・モンスターズ」


お正月テレビを見ていてびっくりした。「出ますように!」っていうプレイステーションドラクエ・」のCM。すごいよね、出るかどうかわからない、でもみんな待ってるっていう気持ちを代弁して宣伝に変えてしまうなんてセンスは脱帽ものです。神主と御子まで拝んじゃってるし。


ドラゴンクエストが家庭用ロールプレイングゲームの代名詞となったのは、もうホントに昔の話しで、当時「Dr.スランプ」を終えた頃の鳥山明が全面的に参加するとあって、僕は第一作目の発売日をチラシを片手に待ってたね。いろんな意味で画期的なゲームだった。山や草むらの広がるフィールドを俯瞰視点で直接歩いて旅をする。敵に出会うと一人称視点に切り替わり、ダメージを受けるとぐらぐらと画面が揺れるあたり、本当にバーチャルな感覚を味わったものです。それまでのパソコンゲームにも似たようなものはたくさんあったし、名作だってあったんですが、ドラクエがその後のスタンダードとなりえたのは、体験するゲームであることのシナリオ的なおもしろさと、スライムなどに見られる鳥山明のポップなモンスターデザイン、そして徹底したユーザーインターフェイスの追求の3点だろう。


その後の他社の二番煎じなゲームを見ればわかることだけど、ドラクエのストーリーはテキスト先行型でありながら、そこで起こることを見せるだけでなく、体験させるということにこだわっている。「ファイナルファンタジー」というよりは「ゼルダの伝説」に近いスタンス。ひとキャラクター分だけあいた崖を「勇気を持って飛び越えろ!」「己を信じろ!」とか言われることで、そのおもしろさを画面以外の想像力で無限に膨らませてきたということ。


第2に、敵であり、平和な世界の侵略者であるはずのモンスターを女の子でも抵抗感の少ないポップなデザインにしてしまったこと。もとグラフィックデザイナーでもあった鳥山明の、色数を抑え、なおかつ張りのある絵のチカラ。それまでのゲームのモンスターが、閉じられたオタクたちだけの共通言語としての記号でしかなかったものを、ちゃんと一般のコトバに翻訳してキャラクターグッズになるくらいにまで昇華してしまったあのセンス。見た目が大きく売り上げに左右するゲーム業界で、なんか楽しそうという気持ちをマニア以外の人たちに抱かせた力量は確かなものだろう。


3つめがユーザーインターフェイスの追求。ウィンドウによるコマンドの選択、便利ボタンの発明はもちろん、僕が注目したのはそのアイテムの名前。武器で言えば「こんぼう」と「てつのつるぎ」では誰がどう考えても「てつのつるぎ」の方が強くて丈夫なイメージがあるじゃないですか。そういうことにちゃんと気を払えたってことが素敵。ふつうだとなんか作者の思い入れなのかわかんないですけど、意味不明のカタカナが並んだ固有名詞とかになってて、ちょっとゲームから離れた時間が長かったりすると武器屋で売ってる武器と、今の自分の武器のどっちが優秀だったかすぐわからなくなります。他にも「おどりこのふく」とか絶対、戦闘には向いてなさそうだけどなんか起こりそうだったりするし。魔法の名前も「ギラ」は攻撃って感じするじゃない? 「ベギラマ」「ベギラゴン」とか活用形っぽくなってて覚えやすいし。そういうのを洗練って言うんだと思う。


で、やっとゲームボーイで出た新作の話しに行きます。これは今までのドラクエとは違ってストーリー性の少ない外伝的な内容なんだわね。モンスターを仲間にして育てて、そこそこに成長したらオスとメスで配合させて、新しく強いモンスターを生ませてまた育てるって言う、「ポケットモンスター」の発展系と言うか、亜流と言うか、そういう内容。でもこれがはまる。ドラクエのブームが起こした功罪として経験値稼ぎという「作業としての戦闘」が挙げられるわけですが、このゲームはそれを反省するどころか、その部分をむしろクローズアップしていい方に転化している。だってこのゲームで戦闘って言ったら「悪の親玉を倒すまでに勇者である僕の前に立ちふさがる数々の難関」ではなく、明らかに「猛獣使いである自分のパーティを世界一強くするために存在する作業」に他ならないから。ただ、それを最初から意識してある作りのおかげで、それが苦にならない。


旅の扉を抜けて、ダンジョン風の異世界に飛び込む。そこに広がるのは迷路ではなく、階下に向かう抜け穴が一つだけあいたフィールド。そういうのが塔のように積み重なってできていて、最下層にボスがいるっていう仕組み。しかもそのマップは飛び込むたびにランダム組み合わせが決められる。たらたらと敵と遭遇するために歩くマップにしては十分なシステムだ。かなり画期的。残りの部分は今までと同じドラクエなんで、ゲームを始めて覚えなくちゃいけないことが少なくて助かります。


ストーリーはきまじめにやっていると50時間前後でエンディングを迎える。でも本題はそこじゃない。ポケモンより後に産まれたゲームとして「一元的じゃないゲームの在り方」、つまり「ユーザーの理想像を追求していくことで完成する個人個人のエンディング」っていうのがあるね。5000円ぐらいのゲームソフトが、そうすることで個人個人のかけがえのない宝物になっていくって寸法。もう中古になんか売りに出せないでしょ? そういうソフトが何らかのIDみたいになって、他のソフトと連動して、内容が変化していくようになれば、かなりゲームも次のステップへという気がします。


このゲームはそんな風に、自分の一番想いを込められるパーティを最強に仕立て上げてくところが醍醐味なわけです。自分の子供は不出来なほどかわいいとかそういう感覚。僕はと言えば、全員スライム系っていう見た目重視なパーティでエンディングを迎えました。そろそろいい年頃になってきたので誰かとお見合いでもさせたい今日この頃です。