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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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CD「コージー」山下達郎

COZY

COZY

別に自分が持っている服や本やレコードの種類で、人格が形成されているわけじゃないんだけど、勝手な判断で身の回りに置かないと決め込んだものがたくさんある。Gショックとか、ハイテクスニーカーとか、ウィンドウズ98とか、ミスチルとか、タイタニックとかそういうの。でもそういうことが最近どうでもよくなってきた。だってそんなことでさ、自分の可能性とか出会いが制限されるのって馬鹿馬鹿しいじゃん。毒でもクスリでも一度からだに入れてから判断しようみたいな風になってきましたね。体力があるときしかできないんだけどね。


山下達郎もそういう勝手に「一生関わらなくていいものリスト」に入ってた人なんだけど、真夜中の高速を真っ赤なスポーツカーで送ってもらいながら小さく流れていたこのCDを聴いて、なんかちょっと今までの自分のココロの狭さに反省をしてしまいました。だってすげえよ、このCD。ただの気持ち悪いおっさんじゃないんだなぁ、あの人。(←まだひどい)。


有名な作曲家だということは知っていたし、様々なヒット曲、たくさんの提供曲も耳には届いていたけど、この7年振りに出されたっていうひとまとまりの曲群は、その楽曲のすばらしさはもちろんのこと、おごりのない表現者としての彼の姿勢の美しさを感じずにはいられなかったのです。


表現者には大抵野望があって「自分には他の人にはないこんなすばらしいことができる」とか「昨日よりこんなに可能性の広がる自分は無限だ」っていう部分が少なからずあると思うし、探っていく姿勢が普通だと思うんだけど、彼の場合、そういう血眼な感じが一切ないのね。「山下達郎」って言うシンガーにぴったりな曲を作る作曲家の自分、プロデューサーの自分がそれぞれしっかりと独立して存在しているんです。


例えば、今まで想像もつかなかったいい曲が書けたとしよう。そしたら普通みんなに聴かせたいじゃないですか。無理しても歌えるように努力したりとか、弾けるように練習したりとかね。でも山下達郎なら、まずそれが「シンガー・山下達郎」向きか判断するんだろう。そしてそれがノーなら、ズバッと切ってしまう。あるいはそれがもっとも似合うシンガーに提供する。そういう余裕がこのアルバム全体に感じられる。風通しのいいアルバムとでも言おうか。聴いてて無理がないです。そして気持ちがいい。


例えて言うとポンキッキーズで歌っているみんなの曲みたいな感じ? 作曲家のエゴからは一歩引いて、単純に音楽を楽しもうよっていう姿勢? そういう意味でも楽しくドーナッツと恋を歌う「DONUT SONG」とかが耳に残った。聴いてみて。