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CD「陽はまたのぼりくりかえす」ドラゴンアッシュ

陽はまたのぼりくりかえす

陽はまたのぼりくりかえす

高校野球に出ている選手はおそらく高校生のはずなので、下手すると僕より10才近く年下ということになる。その感覚が未だにつかめない。スタジアムやテレビという晴れの舞台に立つ彼らは、観客席やテレビのこっち側でぐんにゃり寝そべっている僕よりずっとずっと輝いている。ひと夏のことかも知れないけど、大事な時間を生きているという充実感が伝わってきて、嫉妬深い僕はとても暖かい目なんかで見ることができないのだ。


最近興味があることをしている人や尊敬できる人も年下ばかりになってしまった。僕がもう心中を決め込んだ「スーパーカー」も19才だし、この「ドラゴンアッシュ」についてもそう。彼らはバンドを結成してまだ2年目で、デビュー当時は17才だった。17才。僕が何となくアトリエなんかに通い始めた時期に、彼らはもう自分のやりたいことを見つけ、表現し、それを普通の人にまで伝えるだけの力量があったってことになる。


もちろん若いだけはあって、音楽的な完成度やそこに描かれるメッセージには、あせりや迷いや矛盾が感じられる。でもそこにはそんなことはチャラにしておつりがくるほどの盲信や勢いや熱意が溢れている。そこがかっこいい。


ドラゴンアッシュに初めて出会ったのはテレビ番組「ファクトリー」の収録だった。今年デビューしたばかりのスーパーカーよりも先に演奏していたのだから、そうとう扱いは低かったんだと思う。でもそこでこの3人が作り上げた空間は目を見張るものだった。


僕はその時ドラゴンアッシュなんて名前ぐらいしか知らなかったし、まったくをもって思い入れもなかったのに、たった3曲の演奏で僕は完全にノックアウトされてしまった。司会が紹介を終え、ステージに降谷建志が現れただけで、そこに命が宿るように強い光が射した。ヒップホップのループのリズムに彼の生き生きしたギターが乗り、少なくとも3分の2はファンじゃないオーディエンスに向かってアジテートする。その言葉には音楽はみんなで体験して肌で感じるものだというやさしさが満ちている。みなぎる生命力と溢れ出す音とリズム。ライヴという一種の祭壇で、完全にシャーマンになって見せた降谷建志はその日多くの新しいファンを得たと思う。


その時の一曲目と三曲目に演奏されたのがこのマキシに(2.1)収められている。もう半年近く前に出したものだからか、あの日空から降りてきた神様は、残念ながらここにはほとんど感じられないけど、これからの彼らの成長と活躍を予想するには充分すぎる出来になっていると思う。