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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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ドラマ「超音速攻撃ヘリ エアーウルフ」

facebookを見てたら、アメリカの名優・アーネスト・ボーグナインの訃報が流れてきて、ふいに「エアーウルフ」のことを思い出しました。「超音速攻撃ヘリ エアーウルフ」は、88年頃に日本で放映されたアメリカの連続ドラマシリーズです。CIAが独自開発した、ヘリコプターなのに音速を超えちゃう超兵器の活躍を描くお話です。「ナイトライダー」とか「特攻野郎Aチーム」「マイアミ・バイス」「西部警察」とかの、爆破あり連続ドラマの仲間だと考えるとわかりやすいと思います。

アクションドラマのようで、予算が少ないのか、具体的な戦闘シーンはめっちゃ短いですし、敵機が撃墜されるシーンは明らかに別の作品のバンクフィルムの使い回しだったりします。屋外という体で見てくれというスタジオ撮影やスクリーン合成もだいぶお粗末です。要するにしょぼい!! それでもシーズン4まで続いた人気は、設定とキャラクター、セリフ回しの面白さに尽きると思います。1シーズンごとにまるごとDVDボックスみたいなやつがAmazonで各2500円を切っていたので、追悼を兼ねてシーズン1をポチってしまいました。


主人公が元軍人で今は世捨て人(自分と深く関わった人がどんどん死んじゃうから人見知りが超激しい)のストリングフェロー・ホークという人物なんですが、山に囲まれた湖の畔のロッジで、老犬と暮らしていて、空を舞うホオジロワシを見ながらチェロを演奏するのが趣味っていう設定です。それで名前がそのもじりで弦=ストリング 変な奴=フェロー ワシ(タカ)=ホーク、なんです。そんな謎すぎる名前を他のキャラクターが「変な名前」と何度も突っ込むのも面白いですし、突っ込まれた主人公も笑うわけでもなくものすごく硬い表情で嫌みで返すのも、どこか「北斗の拳」でも見ているような、真面目バカノリ(馬鹿馬鹿しいことを超リアルにまじめに描写することで常識を超えたダイナミックなノリが出てくること)を感じます。


相方のサポートパイロットの「ドミニク」を亡くなったアーネスト・ボーグナインが演じているんですが、この孤独で偏屈な主人公を人情で支える、友人と父親を兼ねたすばらしい位置づけなんですね。ホークが唯一甘えられる人物。軍人でもなんでもない上に70歳ぐらいのおじいちゃんなのに、テロリスト並みの潜入捜査を毎回させられてるのもおもろいです。元々超悪役を演じる名優らしいのですが、僕にとっては人情味あふれるドミニク以外の何者にも見えません。超兵器と人情おじいちゃんという謎の組み合わせもグッと来ます。


極秘裏に開発されたエアーウルフが政府にお披露目の日、開発した博士自身によって奪われ、そのまま中東に亡命されます。それを取り返しに行く任務をホークとドミニクが遂行するのですが、割とあっさり奪還した挙句、10年以上前にベトナム戦争で行方がわからなくなった兄貴の消息をはっきりさせないと返してやんないぞ、とエアーウルフを秘密の岩山に隠すんです。でも交換条件として兄貴を探してる間、CIAの特殊任務はエアーウルフで遂行するという変な共存関係でシリーズが始まるんですね。だから任務を毎回依頼してくるCIAの上官とは、信頼と欺瞞の両方が同時に存在する不思議な関係のねじれがあるんです。そこが設定の面白みですね。


80年代洋画のお約束なのか、セクシーなポールダンスが出てきたり、会った初日に暖炉のそばで裸で主人公に迫る美女とか、意味わかんない面白さもあります。音楽は基本シンセサイザーで、大自然の空撮をバックにする絵につける音にしては、近未来感を意識したにしてもなんだかなーというセンスです。それでも有名なタイトル曲は耳に残るし、それが掛かるクライマックス前では「これから見せ場だ!」と気持ちも高ぶりますね。


放映当時、エアーウルフが好き過ぎて、海外から輸入されたプラモデルをなけなしのお小遣いをはたいて買ったら、あまりに精度がひどすぎて、本体パーツの左右がそもそも接着できないほど形が反っていて、10分もしないでゴミになったのも、今では懐かしい思い出です(許さないけど)。ラジコンヘリの外装パーツは今でも時々売られているようです。全部揃えたら高いですし、飛ばす場所も無いですからとても買えないですけどね。


あとはやっぱ、吹き替えですね。DVDなんで英語音声も入ってますが、中学生時代の僕がVHSに全話録画して繰り返し見たのは吹き替え版なので、吹き替え版をベースに見てます。そうすると放映時にところどころカットされて日本語音声がないところが英語に戻ったりするんですが、比べると吹き替えのオーバーめな演技が本当にすばらしい情感を生んでいますね。映像にない行間を描くオトナっぽい駆け引きの会話が多い作品なだけに、感情の微妙な揺れを演じる声優は、すばらしい仕事だと思いました。


いつの時代も予算が足りてないアクションドラマっていうのはあって、今でこそCGや特撮でうまく安く逃がす技術も増えてきてるとは思うんですが、そうじゃない人物造形や掛け合いの面白さで間を持たすっていう技術というのは、いくら時を経ても古びたりしないので、25年ぶりに再会したエアーウルフを今の僕の感性が懐かしさや思い出補正込みでもちゃんと面白いと思えることは、いい発見だったと思いました。(若い人が見てもピンと来ないと思いますけど)。しかしキャストを一新した復讐編を含まない全シリーズ(55話)揃えても7500円って、すげーなー。