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コミック「女帝」倉科遼/和気一作

正直なところ、若い人の人気漫画のテンポや内容についていけないってのがあって、じゃあ逆にもっと大御所から学んでみるのはどうよ?というところでふと手に取ったのがこの「女帝」です。

女帝 (1) ニチブンコミック文庫 (WK-01)
倉科 遼 和気 一作
日本文芸社
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絵と内容が完全に70年代劇画ですが、2000年前後に連載と割と最近の作品だったりします。大阪に住んでいる女子高生が、水商売の母をガンで亡くし、自身もホステスとしての道を歩むことを決意するところから始まる女一代記です。大阪から銀座に舞台を移した後は、加速度的に有名ホステスとしての地位を高め、最終的に夜の揉め事を解決するのはこの人の他にないというところまでいきます。まさに夜の街に君臨する帝王なわけです。


いろんなやくざや政治家やどうしようもない男達が性欲と征服欲と自己顕示欲をドロドロにかき混ぜる傍ら、ホステスたちがそれを利用したり頼ったりしながら同じように夜の街の階段を登ったり、転げ落ちたりする姿は刹那的でもあり、普遍的でもあります。「欲」というのは良くも悪くも生きる力そのものなんだな、と思ったりします。


エロがけっこう売りなので1話につき必ず1回はねっとりした、いい意味でオヤジ臭いエロシーンがありますが、本編にない場合はシャワーシーンが大きく描かれ、さらにそれも難しい場合は扉絵が週刊誌の熟女ヌードみたいな感じになります。コミックスで読むとそのサービス精神の徹底ぶりには変な安心感を覚えるほどです。


しかし顔の書き方に独特の個性があって「地獄のミサワ」っぽくパーツがセンターに寄りがちです。あと眉毛が「北斗の拳」並に太くて、海苔でも貼ってあるかのようです。でも話が盛り上がっていくにつれ、だんだんその顔が「この世界ではこれが美人なんだ」と思えてくるから不思議です。人物の構図やアングルも多様で、顔以外のデッサン力はほんとに素晴らしいと思います。


主人公が啖呵を切る時に、死んだ母親が熊本出身なので「あたしは火の国の女だよ!」って言って、必殺技みたいに毎回慄然とした顔で凄むんですが、火の国の女だと何がどうなのかは全く説明がないところも面白かったです。「ただじゃおかないよ」ぐらいの意味なのかも知れません。


実写映像化を2回していてTVドラマ版を加藤ローサ、劇場版を小沢真珠が演じているようですが、どっちも線が細くてこの作品の女帝の貫禄とはちょっと違うかなと言った印象です。藤原紀香ぐらいのボリューム感と貫禄(威圧感)が欲しいかな。