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コミック「ヒミズ」古谷実

実写化映画が絶賛公開中の「ヒミズ」を紹介します。

ヒミズ」は「行け!稲中卓球部」で有名になった古谷実が、全面的にギャグを廃して始めた全4巻のストーリー漫画です。


漫画でありながら現代社会における不安や、社会的弱者に向けた視線、若者の憤りなどが複雑に絡み合っていて、文学的な読後感があります。


この作品以降「主人公はいじめられっこ」「主人公に(努力とは無関係に)圧倒的に美人で肯定的な彼女ができる」「主人公とは無関係な場所で惨劇が起こる」「主人公はいつ惨劇の側に引きずり込まれるかわからない緊張感の中で、無自覚に幸せな日常を生きる」というのが、古谷漫画のお約束になっていきます。つまり繰り返し同じテーマを違うタイトル、違う登場人物で語りなおしているのだとも言えます。


その今日までの連作の処女作とも言えるこの「ヒミズ」は、特に荒削りで、ラストも連載時とコミックス掲載時では、意味合いが全く逆になっているなど、賛否両論があった作品です。


主人公は自覚的に運命をたぐり寄せ、あがきます。自分が何者なのか、どこへ向かっていくのか、10代の男の子がすねるには十分なだけの不幸な境遇とその生々しさは、物語という形を取りながら、それ自体が問いかけのようで、作者自身が向かい合っている問題と直結している気がして、だからこそ不条理に終わるしかなかったのだ、と僕は解釈しています。


映画版はまだ見ていないのですが、かなり大胆な再解釈を行なっていながら、海外での評価が非常に高かったと聞いていますので楽しみにしているところです。早く行く暇つくんないとなー。