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ドラマ「鈴木先生」

鈴木先生 完全版 DVD-BOX
角川書店 (2011-09-07)
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漫画の実写化って、大体において「イメージと違う」「チープ」って印象が拭えないものが多いんですが、それはファンタジー要素を少ない予算で無理して実現しようとする無理から来るわけで、逆に言ってみればファンタジー要素が少ないものであれば、ちゃんとドラマ化する意味がある作品だってあるってことだと思うんです。


鈴木先生」はそういう稀有な成功例に上げていい作品です。


いわゆる学園もの、教師ものの枠組みから外れませんし、ドラマが先でそれを漫画化した作品なのだと言われても特に違和感がありません。


また「鈴木先生」の新しいところは、起こっている事件そのものよりもそこに対する考察が多角的で複雑で、現実的であるという点です。例えば、中学生のセックスの是非が話題になると、親の立場、教師の立場、生徒の立場でそれぞれ保守派、過激派、現実容認派が出てきて、それぞれの視点に一定の正論と共感を持たせます。物語のために事件が起きるのではなく、むしろ視点の違いを描くために事件が起きている感じです。だから事件は収束には向かうものの、むしろ解決しないことのほうが多いくらいです。記号のような設定の生徒は少なく、不良にいたっては一人もいなく、生徒たちは中学生の体と頭で全力で問題に対して社会に対してぶつかってきます。


昭和の家族の肖像「サザエさん」に対しての平成のカウンターが「ちびまる子ちゃん」であるように、昭和の学園教師ものである「金八先生」のフォーマットを、平成でアップデートしたのが「鈴木先生」なのだとも言えると思います。


演出もすごくいいです。鈴木先生のシンボルでもある眼鏡を生徒たちが順番にかけていくオープニング、モノローグとテロップを併用しながらキーワードによって事件の核心に迫っていくような感覚、またムードが転調するときに流れる重いディストージョンギターの音色とスローモーション処理。どれもカッコつけすぎない程度にバッチリはまっています。


鈴木先生を演じる俳優・長谷川博己は「家政婦のミタ」でも似たような眼鏡と髪型で、モラトリアムから抜けだせず3児の養う父となったダメな人を演じていますが、あまりに鈴木先生がはまり役だったので、全然関係ない「家政婦のミタ」を見ながら「いやいや、鈴木先生がそんな馬鹿な選択するはずないし」とか思ってしまうくらいです。


また余談ですが活発な女生徒の一人に仮面ライダーオーズで敵の幹部メズールを演じていた未来穂香がいるのも、個人的な盛り上がりポイントです。