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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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コミック「アラサーちゃん」峰なゆか

サブカルは死んだし、テキストサイトなんてとっくに衰退したかも知れないけど。結局90年代から抜け出せないモラトリアムと僕の渇望は続いていて。それってなんだろうなって突き詰めていくと、「観察眼」と「表現」の程よいバランス感のことなんじゃないかと。


テキストサイトがブログに飲み込まれて、TwitterTumblrによって繰り返される引用さえも発信以上の意味を持つようになり、いろんな人の瞬間的な自意識だけが反復、増幅しているのが新しいとは思いながらも、寂しく、気持ち悪くもあって。自分の観察眼をまとまった時間を掛けて、表現にまで磨いたものっていうのが日に日に足りないと思うようになってきたんです。

前置きが長くなってしまいましたが、このコミック「アラサーちゃん」はWeb発信の4コマ漫画です。女子ならではの恋愛セックス本音あるあるを、ずばっと鮮やかに斬り込んでいきます。よく「男性の下ネタはファンタジー、女性の下ネタはドキュメンタリー」と揶揄されるように、女性から発信される下ネタは笑えないと言うか、引くことは少なくありません。エッセイ風漫画であれば、冗長で内輪受けすぎて意味不明なことも多々あります。アラサーちゃんの笑いも、実体験っぽい生々しさがあるのですが、「わかってほしい女心」みたいな被害者的自意識の配分が絶妙で、女性ならではの視点ながら、男女分け隔てなく笑える内容に仕上がっています。女性ならではの世界を描くには、男性原理で解体して書かないといけないっていうのが僕の持論でもあるんですが、それを実践できちゃってる久々の女性作家なんだと思います。


デザインもすばらしい。フォトショップでベタ塗りしたような絵なんですが、色のセンスも、キャラクターデザインのセンスも、なんでこんなに愛くるしいんだろうっていう美大的おしゃれ感をくすぐります。人体デッサン力だけ取ってみても異常なうまさなので、本当に感服しますね。広い意味で人間観察力が優れているんだと思います。


作者は元AV女優ですが、タレント本としての売り方は表紙や帯にはされておらず、それ自体が内容だけで十分戦える証明にもなっていると思います。オススメです。