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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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映画「わたしを離さないで」

サスペンス風味のヒューマンドラマです。謎が徐々に明らかになっていくことが最大の面白さなので、内容に触れないで薦めるのが難しいですね。


原作はカズオ・イシグロが書いたベストセラー小説です。ある特殊な環境の寄宿舎で生活する若者たちを描いています。


21世紀の青春映画や青春小説というのは、20世紀までのそれと違って、明らかに絶望の色合いが濃いと考えています。日本に限って言えば、老人が増え、少ない子供たちから未来を搾取する形でしかお互いが共存できない現実がありますので、安易に「希望を持て」「強く生きろ」と言えない空気があります。


この作品もSF的な設定ながら、そういう「閉じられた未来」を生きる若者の儚い姿を描いています。


どこにも行けない。何にもなれない。社会の替えパーツとしてしか存在を認められない。でもその中で尊厳を失わずに生きないといけない。


逃れられない運命のことを「死」の暗喩だとやんわり受け取れば、それは全世代に通じる「生きるとはどういうことか」という大らかなメッセージになるし、「世代論」と捉えれば、オトナ(特に小さいこどもがいる人)に対する痛烈なカウンターにもなっていて、僕はまさしく言葉を失った側の人間でした。実際に、映画の中の若者たちは、社会の中で「かわいそうな運命だけど必要な人たち」という目で見られており、それを無自覚なイノセントさが事態の悲しさをより引き立てます。


残酷で非情な現実を飛び道具なしのとても優しい空気と演出で描いているのは、真綿で首を絞めるという表現がぴったりで、見ていて本当に息が苦しくなり、手にびっしょりと汗をかきました。3人の主役も、本当にそう言う背景のある若者のように見えました。心に余裕があるときに見て欲しいです。