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書籍「安彦良和対談集 アニメ・マンガ・戦争」安彦良和

アニメ・マンガ・戦争
安彦 良和
角川書店
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安彦良和という人は初代ガンダムで、キャラクターデザインと作画監督をやった人です。ガンダムというとあまりに個性的な監督・富野由悠季に目が行ってしまいがちですが、ゲームで最初に目につくのがスクリーンショットであるように、ガンダムからあの独特の絵を抜いて語ることは無理がありますし、劇画アニメでもないのに筆で書いたような、しかしとても線や色が整理されたデザインは今でも色褪せることがなく、スタンダードとして認知されています。


この対談集は特に、モノづくりや日本の立ち位置についてにフォーカスした内容に富んでおり、対談相手としては出てこないものの富野監督とのはっきりとした物の見方の違いにけっこう衝撃を受けました。お互いの才能を激しく認め合いながら、人間性や思想はまったく相容れない、そういう複雑なライバル関係が、ガンダムを不朽の名作たらしめたのだな、と思わざるをえない感じです。特に、アニメを見てはいないけど(!)「ターンエーガンダムはものすごい傑作だったに違いない」って言ってる下りなんかは、ターンエー大好きな僕としては目がキラキラしちゃうぐらいうれしかったです。


ただやっぱアーティストかな、と思える一面もありますね。どちらが正しいというものではないんでしょうけど、人の上に立つ監督としての物の考え方とはやっぱり異なる気がします。自分で手を動かして最終的な絵を直接組み立てることが出来る人と、他人の手によってそれを成し得ないといけない人の違いなんだと思います。


20人近い対談相手の扉絵には安彦良和が書いた似顔絵が描かれており、これがまた絶妙なデフォルメ感で、相手を知る人なら笑いがとまらない感じです。ペンではなく面相筆1本で「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」を描いたという恐るべき集中力と技量が、この次の10年どこに向かっていくのか、ガンダム世代の僕らとしては相変わらず目が離せません。