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映画「千と千尋の神隠し」

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宮崎駿監督作品は、いつもすごいなーと思う一方で、あまり好みではないと思い続けていたんですが、最近のここ何作かはけっこう好きで、その転機になったのは「千と千尋」なんじゃないかと思っています。


映像のリッチさ、映画としての完成度という意味では「千と千尋」は最大限にゴシックになった作品だと思うんです。そういう意味では公開当時はおなかいっぱいになりすぎてあまり好きではありませんでした。


でも主人公の女の子「千尋」が今までの宮崎作品に比べて「美人な聖女」という切り口でないところに引っかかりました。これは続く作品「ハウル」「ポニョ」においても同じで、見た目は美しくはなく、扱いもややモンスターに近い。だからこの3作に訪れた変化というのは「女性の描かれ方」の変化だと思うんです。


見た目も不定形な女性主人公が、見た目同様いろんな扱いを受けながら、神話的なあっち側の世界に行きかけて、自力で帰ってくる話。かなり抽象的ではあるんですが同時に「成長もの」としての普遍性を持っているので、すごい評価をされているんじゃないかと思います。現在も日本で公開された映画の興行成績では一位になっているそうです。


親が必ずしもいい大人として描かれていないのも面白いです。親の暴走と強欲からストーリーが始まって、そのつけを娘が社会の縮図とも言える風俗で働いて返す、それ以外の方法ではその世界で存在することが許されないし、生きて帰ることもできない。奇跡的とも言える努力の末に親と人生を取り戻しても、親はそのことに全く気づいていない。世代間の問題を皮肉っているようにも見えます。


ハウル」「ボニョ」に至っては物語の形さえ崩壊しているのですが、その結果としてその女性のある種の不条理性と母性、そして神話的な比喩が同時に強調されています。若手の監督の作風が人生経験とともに変わっていくのはよくあることですが、大御所になってからの、そういう大きな変化というのはとても興味深いです。