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ドラマ「白い巨塔」

白い巨塔 DVD-BOX 第一部
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原作は何度も映像化されている山崎豊子の名作小説です。大手大学病院での権威と正義について、二人の正反対な医者が病院や裁判で戦います。


昇進と権力の掌握に余念がないカリスマ的な天才外科医を唐沢寿明、地味だけど患者一人ひとりに向き合い、正義感に燃える内科医を江口洋介が演じています。


僕は群像劇が好きです。それはすべての登場人物に、それぞれの立場においての正義があって、その衝突によって引き起こされるのがドラマだと考えるからです。「ガンダム」や「ロード・オブ・ザ・リング」がそうであるように、世代を超えて受け継がれる物語というのは、そんな正義の多様性を内包していると考えます。別の言い方をすると登場人物全員に共感できるだけの行動原理があり、「悪人がいない」物語であるのかもしれません。


どんな仕事に携わる人でも、自分がその職に関わる上での正義を持ち、その職でしか通用しない悪を断ち切ろうと日々戦っているのだと思います。でも実際には自分の足を引っ張って見える人、業界にとって害悪にしか思えない人も、別の尺度の正義を貫いていることには代わりがなくて、その人にとっては自分こそが悪かもしれない。そういう矛盾は戦争がなくならない理由と一緒で、古今東西なくなることがありません。正義は人の数だけあります。そして貫ける正義はひとりに1つだけです。


白い巨塔の原作は最初、裁判に到り、患者側が敗れるまでの話で完結する予定でしたが、あまりの反響ぶりに第2部が追加され、裁判がもつれ、カリスマ外科医が死ぬところまでが描かれました。問題提起に対して、死という「罰」が彼に与えられたことでエンターテインメントとしての説得力はより強固になるのですが、僕らが生きる現実はもっともっとシビアで繊細なのだと思います。それを確かめるように僕はこの物語を何度も何度も観直しています。