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TV番組「仮面ライダーW」

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今までの仮面ライダーシリーズと大きく異なるのは、二人の主人公がひとりの仮面ライダーに変身するところです。松田優作探偵物語にそっくりな半人前の探偵少年と、デスノートのLに似た社会的に不適合で記憶喪失な検索少年が、街に襲いかかる危機に立ち向かい解決していきます。


変身ベルトには地球の記憶が詰まっている「ガイアメモリ」というUSBメモリ風のメカを挿します。敵もこのメモリを持っていて、能力に応じたモンスター「ドーパント」に変身して襲ってきます。メモリにはどうやらアルファベットにちなんだ26種類が存在するようです。


仮面ライダーのデザイン自体も、右半分左半分でぱっきりと色違いになっており、2本挿しメモリのベルトから1本ずつ差し替えることで、戦う敵に合わせた能力と見た目に仮面ライダー自身が変化します。例えば黒色のジョーカーメモリはシンプルな肉弾戦を得意とし、緑色のサイクロンメモリは風の属性を持った技を繰り広げます。これを合わせることで風の属性を取り入れた肉弾戦ができる仮面ライダーに変身するわけです。これを赤のヒートメモリに挿し変えれば炎の属性を持った肉弾戦ができるように変化します。


不思議なのは、二人でひとりの仮面ライダーに変身する際に、合体するわけではなく、一人の肉体にもう一人の精神だけが送り込まれ、残された一方の肉体は意識不明のような感じでその場に倒れてしまうところです。設定としてはもちろんありだけど、メインターゲットである子供たちが変身の真似をする際に、検索少年の役をやると、「変身!」と威勢よく言った後は、その場に倒れるだけで終わっちゃうのがちょいさみしい感じです。顔のデザインはかっこいい!ってほどではないんですが、3歳児でも似顔絵が描きやすいという点ですばらしいシンプルさです。


二人でやっと一人のライダーであることは物語にいろんな葛藤を呼びます。戦いの最中にも単純に二人の気持ちがまとまらなかったり、仮面ライダーW以外にも一人で変身できる別の正義のライダーが登場したりして、常に自分の存在意義を問い直す機会にさらされます。


そしてそれぞれの主人公にはトラウマがあります。自分たちが半人前だったがために先代の命を失ってしまった探偵少年、自分が何者かわからずに少しずつ敵の家族の一員ではないかと気づき始める検索少年。若くて多感なだけでもいっぱいいっぱいなのに、敵はそのトラウマにもすかさず攻撃してきます。


そんな重く暗い背景を持ちつつも、ドラマ全体はコメディ調の明るく楽しいテンポが守られており、毎度のドタバタ劇がちゃんと機能している点、それゆえの陰と陽のコントラストの強さや、アクション時のメモリの挿し替えによる戦い方のよどみない変化のつけ方など、息をつく暇もないくらいの濃密なエンターテインメントが繰り広げられます。


最終回では、ついに探偵少年が一人で仮面ライダーにならなくてはいけない、独り立ちのエピソードが語られ、半人前だった少年が確実に一人の男として独り立ちする瞬間に涙を禁じえません。それはそれを観ている子どもが成長していつか巣立っていく姿を見守る親の気持ちそのものをなぞっています。


今まで2作の映画が作られていますが、どちらも「親父越え」「乳離れ」をベースに話を構成しているのが印象的です。親子でそれぞれが楽しめる娯楽作品として十分なオススメ作品です。