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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

  ラヴフール(www.lovefool.jp) 

CD「Complete Best」Perfume

今でこそ有名な彼女達ですが、初期の詞にスポットを当ててみたいと思います。売れないアイドルユニットとして、下積みを続けている間、詞を書いていたのは木の子と呼ばれる女性です。


キラキラとポップでポジティブな楽曲とそのタイトルの印象に「え?これがアイドル向けの詞?」って言うような、女性的な不安定さやネガティブさをねじ込んでくる感じが、表現の化学反応を生んでいます。「病んでる」と短くまとめることもできなくはないのですが、切実さとリアルさだけじゃない、自分を俯瞰するような冷静さが群を抜いている気がします。


レトロフューチャー的な手軽な便利さであるモチーフ、例えば「リニアモーターカー」「電子レンジ」「ビタミン」に対して、ウィルスに犯されて恋に落ちていく女の子の胸の鼓動をリニアモーターカーの超スピードに掛けていたり、電子レンジで温めなおせるかな?と思っているのは、もう修復不可能なほどにぶっ壊れてしまった二人の距離。DVっぽい彼氏から受けた心の傷を心のサプリメントとして、ビタミンで癒そうとします。でも実際に頼りにできるのは自分の「自然治癒」だけだともわかっている、そんな娘です。


便利で明るいモチーフに対して、微妙で複雑でしかも劣勢な恋心を「そんな風にすべての問題が簡単だったらいいのにな」って笑って→でも現実はそうじゃない、実現度もかなり低いっていうネガティブループを、アップテンポな楽曲で明るく唄います。それが弱者の声にならない心の叫びのようにも聞こえます。「自分にもドラえもんがいたらいいのにな」って思う弱い気持ちを、他のモチーフで言い換えてるのだとも言えます。文科系女子のテキストサイトやポエム日記を読んでるようなパーソナル感。それが、まだ売れてないアイドルユニットの下積みの不憫さとオーバーラップして、えも言われぬ切なさを生んでいます。オタクなおっさん達の胸もきゅんきゅんしちゃうわけです。


メジャーデビュー後は、楽曲の中田ヤスタカが詞も担当するようになり、それはそれで引き続き女の子らしい機微を感じさせるいい表現やシチュエーションが満載なんですが、青春の、光が当たり切らない、でも、ひたむきな、そういう長い長い時間を思うとき、初期の詞のすばらしさは他のどのアイドルにも負けてない、そんな輝きを秘めていたのだと思います。


青春は、じめじめと暗いままでいられる時間だからこそ、懐かしくて甘くて切ないのかもな、とも思います。モラトリアムってそもそも支払い猶予時間って意味ですしね。大人になると「悩みに迷っていられる時間」自体がものすごく贅沢なものなんだなってわかりますね。