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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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映画「ベスト・キッド」

アメリカのありふれた青年が、日本人のおじいさんから空手とその心を学んで、いじめっ子に勝つ、という超わかりやすい青春娯楽映画です。


80年代に十代を過ごしたおっさんである僕としては、目まぐるしくきらびやかな今の映画より、当時の映画のテンポの方が生理的にしっくりきます。カット割りの一つ一つを取っても、DVDで何度も見直さなくたって一回でそこに込められた意味を汲み取ることが出来るし、2時間という時間の中で起こる心情の変化も、あー、これぐらいが自然だわ、とフツーに思えます。


海外のヒーローものというと、一昔前までケツあごでマッチョじゃないと受け入れてもらえなかったらしいんですが、この映画のヒーローはべビィフェイスで、優柔不断で、思いやりがあって、くたくたのネルシャツとか着てて、ぜんぜんリーダーシップとかに興味がない、かなり日本人的な主人公です。空手を習っても猫背だし、筋肉的な意味では全然強くなっているようには見えません。


空手のテクニックや格闘技としての強さよりもまずその心や姿勢が重要と言う点を、この映画は何度も繰り返し説いていて、視点が主人公側だけでなく、先生側にも自由に行き来しながら見られる点がいいと思います。理解し成長する自分、理解させ成長させる先生の両方が楽しめます。その入れ子になった状態が、西洋人にとってファンタジーの世界であるだろう「東洋の心」みたいなのをなんとなく知る仕組みとしてうまく出来ていて、痛快アクション映画としての物足りなさを、ファンタジー成分でうまく補っています。


80年代のストーリーの定番モチーフは僕にとって「ラブコメ」と「アメリカ文化のトレース」なんですが、ベストキッドにおけるその2つのベタ圧縮度は快感ですらあります。ガールフレンドは金持ちで、腕っ節の強い彼氏がいるとか、悪役はどこまでもしょぼい悪を貫き、その集団の名前が「コブラ会」だとか、主人公は大した努力もなくどんどんと成功を手に入れ、ガールフレンドとダンスパーティは欠かせないし、しそうでしないキスを何度も繰り返すとか、まだ持ってない車を借りてガールフレンドと初ドライブとか。ありもしなかったはずの青春をとても懐かしく感じる瞬間です。なんなんだろうなー、あの感覚。ゲームをプレイしているようなそんな一体感があります。


このシリーズは3作+主人公を女性に変えた1作が作られ、2010年のこの夏、主人公を黒人の少年、師範をジャッキーチェンに変えたリメイク新作が公開されるそうです。80年代を(僕が)楽しく思い出させるような映画になってるといいな、と思います。ではまた。