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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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映画「ジョゼと虎と魚たち」「ひみつの花園」

takanabe2005-05-31



ジョゼと虎と魚たち」 90点
 すんごい良かった。登場人物全員の気持ちが手に取るように分かる。映像の色合いや温度が僕の目に映る色と同じ。くるりの音楽も映像と感情に馴染んでいてすばらしい。この映画を語るときにジョゼの身体障害を抜きにすることは難しいし、特に議論の中心に置かれることが多いんだけども、見終えてそれはちょっと違うかもなと思った。確かに主人公の恒夫の回想視点で語られ、「僕は逃げたのだ」と締めくくられてはいる。でも最後に映るのはジョゼの笑顔な訳で。そこだけ彼の回想からはみ出ている。この瞬間、観客の視点は1階層上がって全員を見下ろす俯瞰視点になる。恒夫は自分は逃げたと後悔する。でもジョゼは笑顔で昼の町を自分の力で走り回るようになった。だからこれは不誠実を悔いる話ではない。それは単なるひとつの恋の終わりでしかないのだ。誰の勝ち負けでも、誰の損得でもなく。そこに僕は強く共感できた。人生のある時期を、欲情や同情やどんなきっかけでもいいから「いっしょに過ごしたい」と思って実際そうしてみて「やっぱりちょっと違うかも」と思って離れていく。それは不真面目なことではない。そこに相手の障害云々は関係ない。理由が目に見えやすい場所にあったかなかったかだけの違い。だから別れた後には言葉に出来ずに涙がこぼれるし(それは誠実さから出た涙ではないけど彼には彼自身を考えるきっかけになったはず)、ジョゼには自身では想像が出来なかった自立の世界が広がった。この恋には、というか、ありとあらゆる恋には価値があって、それがその後の二人の未来を大きく揺り動かしていく。その誠実な事実に僕はリアルさを感じたし、大きく共感できた。ひとつだけ気になったのは、ジョゼがあまりに恒夫の表情を見ていないこと。あんなふうに虐げられて耳年増に育った子が、他人の顔色を伺わないわけがないと思うんだけど、そういうもんではないのかな。


ひみつの花園」 70点
 スウィングガールズ矢口史靖監督が1997年に撮った作品。お金を数えるのが趣味で銀行員になった西田尚美がパッとしないOLから、目的を持ち自己実現できる人になる話。低予算なのか、いろんなところがものすごくしょぼいんだけど、先が読めない展開が面白くて引き込まれる。ノリとして近いのは「バタアシ金魚」かな。演出とか間の取り方が97年にしてはちょっと古い感じもするけど、動機はともかく5億円に向かってシンプルに突き進みあらゆる技術と栄光を手にして、結果として人生の目的を手に入れるというその、「順序は逆だけど、それはそれで美しい」っていう感じが気持ちいい。