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映画「ロードオブザリング 二つの塔」

takanabe2003-02-28



楽しみにしていた「ロードオブザリング 二つの塔」を初日に観て来た。(映画の内容を知りたくない人は読まないでね)ネットで劇場予約をしたので並ばずに済んだ。時代はネットだ。


始まりでも結末でもないまん中の第2部ということで、テンポや盛り上がり方をちょっと心配していたけど、もう導入部からガツン!と持っていかれた。回想シーンかと思ったら、えー!うそー!そっから始まるの!?って画面に目がくぎ付け。強烈なツカミに度肝を抜かれる。まるで007が始まったかのようだ。


ストーリーとしては前作で3つに分かれた旅の仲間のその後の冒険をパラレルにつづる。指輪を持っているフロドとサム(ホビット)は、二つ前の指輪の主人「ゴラム」に出会い、オーク(凶暴な種族)にさらわれたピーターとメリー(ホビット)の行く末と、それを追っかけるアラゴルン(人間)、ギムリドワーフ)、レゴラス(エルフ)の三人の動向を追う。


指輪を捨てに行く先「滅びの山」に近づくに従って、あらゆる種族の中で一番純真であるはずの主人公フロドにも、指輪の誘惑や恐怖が重くのしかかってくる。ただし指輪の恐ろしさはなんとなくしか語られない。はめた時の効果も姿が消えるだけ?って感じ。本当にこの指輪に世界を滅ぼすだけの力があるのかはよく分からない。


曖昧な指輪の効果よりも逆に一作目より強調されるのが、この映画のテーマが「迷いとの戦い」と言う点だ。指輪を「愛しいシト」と呼び、取り返すことに異常な執着心を燃やすゴラムとの気を許せない旅によってそのモチーフは反復される。この旅が果たして「使命感」によるものだけなのか、使命感にコーティングされた「私欲」なのか。旅を阻止しようとする外敵も数多く登場するが、そういった障害よりも大きく自らの弱さとの戦いがクローズアップされる。一作目に引き続き、一見何にも活躍してない主人公だけど、そう考えると行動しない理由がすんなり見えてくる。


ニュージーランドで撮影されたその景色は物語の舞台そのもののように映るし、各種族はコスプレじゃなくて、本当にそういう人たちがいる(いた)みたいに見える。それぞれにそれぞれのプライドがあり、他の種族には理解しがたい守るべき風習や故郷がある。その確執の中で自己中心的な「実利」を取るか「世界を救う」という最初の「使命感」を全うするかに揺れる。フロドだけじゃなく脇を固めるキャラクターにもみんな弱さがある。その弱さをお互いにフォローしあって結果的に信頼を強める姿が物語を厚くしている。特に召使いのサムは、フロドの揺れまくる気持ちに対して、感情にほとんど流されないいつもニュートラルな姿勢を保ち、いいコントラストを出している。


第一部で登場人物紹介が終わったせいか、今回一番アクション面で大活躍するアラゴルンギムリレゴラスの三人の性格描写があっさりしすぎてるのがもったいなかった。一作目と間をあけずに見たら問題ないんだけど。劇場公開のリズムで見てしまうと若干「あれ? こんなんでいいの?」って感じ。


この映画では悪の象徴行為を「テクノロジー」や「文明」そのもののように描いている節がある。ホビットやエルフやドワーフが自然になじむような生活を営んでいるのに対し、悪い魔法使いとその兵隊であるオーク達は、木々を倒し、火を焚き、鉄を打ち、高層ビルのような塔で空を貫いている。ただし原作では、この物語が何かの比喩として語ることが目的ではないし、そういう行為を一切否定すると前書きに書いてあるんだそうだ。(原作は未読です)。だからこれは単に僕の感想。


魔法使いの強さもよく分からない。ゲームなんかだとパーティの後方で回復魔法とか、でかい爆発魔法とか唱えるイメージだけど、この映画だと呪文を唱えるシーンはほとんどなくて、戦うシーンでは他の戦士と同様、杖や刀で物理的な攻撃をしているシーンが多い。説明がないだけで、魔法でその力を強めている物理攻撃なのかもしれないけど、結果的に魔法の定義が曖昧なってしまっているのがちょっともったいない。


一作目で大活躍したアラゴルンは今回もかっこいいところを持っていきっぱなしだ。3日間徹夜で野山を駆け回った直後に5日間の戦争で先陣を切ったりする。セリフもいちいちかっこいい。チームの中でもお兄さん役だ。アップのときは特に扱いがよく、地面に耳をつけて敵の足音を聞き分けてる登場シーンや、ただ扉を開けるだけのシーンでもカメラのより方、なめ方、スローモーションなどの効果も含めて「ずるい!かっこよすぎ!」って思う。こういう世界にあまり興味のない人が見ても、彼の活躍だけを追っているだけでも映画は楽しめてしまうように構成されている。サービス精神だと思う。


ファンタジーって言うのはジャンルじゃなくて、そこに確かに存在することを「信じるチカラ」そのものだよな、と思うのです。監督はその点においてほんとうに忠実に世界を描いたし、原作を何も知らない僕のような素人にも、その世界を正しくキュレーション(展覧会などを順序だててプロデュースすること、紹介)してくれた。監督のその世界に注いだ愛情をちゃんと受け止められたと思う。だから早く続きが見たくて仕方がない。原作は映画を完結させてから読む予定。それも楽しみ。


あとオマケだけど、サムは「グーニーズ」で主人公だったショーン・アスティンだと知って、あの悟ったような目つきの理由がわかった気がした。エルフの王は「マトリックス」の敵の人だしな。リブタイラーだけ、フツーのねーちゃんみたいで浮いててもったいないね。