lovefool

たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

  ラヴフール(www.lovefool.jp) 

世界が終わる


新しい出会いはもういらない。コミュニケーション恐怖症。おおざっぱすぎて申し訳ないけど、それが今の正直な気持ち。出会いはいつだってかけがえがなく、僕の生活に新しい息吹を送り込む。でもやっぱりネット上の出会いは(という言い方しかできないけど)それだけじゃないんだ。


僕は自分が大事にでき、自分を大事にしてくれる人を瞬時に見分ける弱者の嗅覚のようなものを持っている。そしてその才能によっていくつかの素敵すぎる人たちと、実際の空気を震わせる、電気や電話線のいらない世界で会うことができた。


でもそうして導かれ出会った人たちと、何かを真剣に噛み締めれば締めるほど、どんどんつらくなっていくことに気がついた。もともと運命のきまぐれルーレットとして作用していたワールドワイドウェブというクモの巣は、日常の生活導線とはまったく重ならないところにその魅力があるわけで、温かなものを求める出会いと本質的に同等でありながら、学校で隣のクラスに気の合う奴をみつけたって言うのとは根本的に違うってところが厄介です。


「もっと近くに住んでよ、神様ー!」


 小一時間電車に乗れば会える娘でさえ、電話口でそんな風に言う。


「近いんだからいくらでも会いたいときに会えるじゃん。呼べよ」
「違うの。会おう!って言ってから会うんじゃ駄目なの」
「じゃあ、家がそばだったら?」
「夜中とか会いたいときに会いに行って、ファミコンとかできんじゃん」
「別に今だってすればいいじゃん」
「やなの!」


他愛のないわがままではあったけど、その娘の言いたいことよくわかった。で、実際僕自身も悩みを抱えるのはそんな日々の他愛のない気持ちを、ふつうに処理できない絶対距離にあるのだった。「会いたいときにあなたはいない」。それは悲しいかな事実なんだわね。


だから言ってしまえば、もう新しい風も景色も知識もいらないってな感じ。何もかも全部遮断して、2度と外に出れないようにドアを打ち付けたっていいんだ。それくらいにおかしくなっている。おかしな事を言っている自分がわかる。


でも今以上、「大事」を失うのはもうこりごりです。それは恐れじゃなくて、むしろ突破方向で。飛び出して突き抜けて一緒にもっともっと先っちょに行きたい。「大事すぎて想うだけで痛いから、今まで全部をなかったことにしたい」とかね、一番聞きたくないタイプの結論。だって体中に食い込んでるんだ。切り離せない。もう何も欲しがらない。他に何も欲張ったりしない。だから消えないでいて。ねぇ、ずっとここにいて。わがままでしょう? 仕方ない。だって会いたいよ。空気を震わせてだったらいくらでも泣いていい。気が済むまで泣かせてあげたい。そしたら少しは楽になるのかな。


僕は誰かをへこませたり、元気をなくさせるために生きているわけじゃない。誰だってそうだろう。誰にだって大事な人がいて、大事にしたい気持ちや大事にされたい気持ちがある。誰にもうらまれたくないし、できればちょっとは好かれたい。僕が今日もここにいて毎日を生きているのは、僕に出会うことで誰かの気持ちややる気が昨日よりほんの少しでもやさしく、強く、前向きになれるようにしたかったからです。


そういう気持ちに支えられてこそ毎日が楽しいし、そうやって生きていてもどうしても悲しいことやつらいことが起こったりする。それは一生懸命に生きていればいるほど避けようがない。そして誰かが誰かを完璧に理解して、幸せにし続けることなんて不可能だろうなとも思う。


でもだからこそ、自分を取り囲む人と育むその時間と空気だけはいつも大事にしたいと思った。僕といることでちょっぴりでもやさしい気持ちになれたり、いくつかの大事なことを共感したり、その人のつらい気持ちや悲しい気持ちを少しでも忘れさせてあげられたらと思った。だからその人が発する有形無形のメッセージを一生懸命受信する。答える。何度も何度も確かめる。


ある時は鏡になるし、ある時はライバルになるし、ある時はお父さんになるし、ある時はファービーみたいになったりもする。それがその人にとってすべてを満たすだけのものとはとても思えないけど、何も考えずに発した言葉が時折ナイフのようにとがることぐらいは26才的にわかっているつもり。だから誤解がないように精いっぱい言葉を選ぶし、間違ったと思ったらほんとに言いたかったことをどんなにつたない言葉でも伝えるように努力する。そしてすすんでうれしいことを探す。応援する。たくさん笑う。


そうして生きて時々おんなじ星を見上げる人に出会ったら、またたくさんうれしくなる。ラヴフールはそのための装置として、今日まで続いてきました。でももういいや。ちょっとの間、静かに目を閉じていたい感じ。好きでよく見に来てくれた人、どうもありがとう。1年と半年あまりの時間、前身である「home:takanabe hiroyuki」の頃から合わせて素敵な人にいっぱい出会いました。会社と家との往復だけではけして会えなかっただろう、同じ星を見上げる人たちに、たくさんのものを授かり、その人たちとしか紡げない貴重な時間を紡いだ。その時間を僕は一生忘れないだろう。そしてこれからもそんな時間を望んでくれるなら、時々は紡いでいけるのかもしれないね。ホントは時々じゃ全然いやなんだけどね。今にもにじんであふれてこぼれてきそうです。