lovefool

たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

  ラヴフール(www.lovefool.jp) 

濃ゆく


ラヴフール」というコトバは多分造語で「愛に夢中なおばかさん」というような意味に違いないと思ってつけた。愛はもちろん、世界一大好きなあの娘を想う気持ちのことだったり、尊敬してやまない先輩クリエイターを目指す志だったり、自堕落な思い出に浸る甘えの時間であったりとそのときそのときで形を変える。でも一生懸命に伝えたくて仕方がないという意味において、それらはすべて愛と思っていいはず。


インターネットという網の端っこを握ったばかりの頃は、もう世界を手中に収めたみたいな気になって、海の砂のように広がる出会いの可能性すべてに翻弄されたものだ。出会いは人と人との気持ちの触れあいの始まりのことであり、かけがえがない。単純にお金じゃ買えない。その無限ともとれる出会いの偶発装置を手に入れたんだと思った。その認識は変わらずに僕のネット生活は今日も続いているわけですな。


デスクトップ上の物語はその気軽さも伴って、どうしても希薄なものになりがち。電話線を伝って世界を飛び交う気持ちそのものは、僕自身かなり信頼している方だと思ってますけど、単に顔や声を知らないってことがこんなにもリアリティをそいでしまうとは、想像も付かなかった。


指先でリンクを辿って知らない誰かの日記を読む。僕の知らないどこかで起こっていた、同じ一日の誰かの気持ち。ある人は昔の恋人に泣かされ、ある人は重い生理が始まり、ある人は徹夜の仕事場でカップラーメンを食べてる。全部きっとホントなんだろう。でも希薄。お互いの気持ちに愛がないから。伝えたい気持ちも、受け取った気持ちも、普段の日常生活のように同じ空気をふるわせて受け止めることができないから。だから、そこには多かれ少なかれ誤解と不満が必ず起こる。それを積み重ねるとストレスになる。ストレスは体に悪いです。それがイヤで不意にしてしまった関係も多々ある。返事を書きたくないメール、一方的で意味不明な日常の羅列、あるいはその逆の加速度的な妄想、爆発的な恋とかも。


ここんところ「脆弱にやさしく」が僕の中で一つのキーワードになっている。インターネットのようないきなり個人と個人がダイレクトにつながる野蛮なツール(もうほとんどルーレット)も、実は「よく知らないけど、信じておこう」みたいな「信頼」という素朴で脆弱な原則の上で成立しているところが興味深い。「分かろう」ではなく「分かったことにしておこう」なんて曖昧で弱気な姿勢。まぁ、僕は人を見る目に相当自信あるんだけど(実際会った人たちは素敵な人ばかりだ)普通はある一線を越えた付き合い(電話、顔写真、実際会うとか)はちょっと怖いこともあり得るって考えるんじゃないんだろうか。


「信じる」っていうことはとても体力がいるので、インターネットを画面の向こう側の仮想世界だと思いこみたい人たちにとってはうっとうしいことだと思う。日常生活だって充分すぎるほどコミュニケーションには体力を使っているだろうし、それ以上のものを「ここ」に求めるのもなんか違うかもという気持ちもまぁ分かる。でも僕は、ウェブ上のコトバや気持ちを信じるたり受け止めたりっていう行為に、声や匂いや空気や温度はやっぱり切り離して考えられないや、と思った。


例えば初めての人からメールをもらう。返事を書く。でもそこに書かれた名前(Aさん)がたまたま他のメールをくれる人と同じ名前(Bさん)だったりすると、もう全然ダメ。どうしようもない。そこに書かれたコトバに対して機械的に返事を書くことができても、それ以上AさんとBさんを距てるものはなくなってしまう。全く関係のない個性と個性が僕の中で同じ一人として扱われてしまう。その程度の付き合いで充分だと思う人にはそれでもいいかもしれないし、そういう人には僕もそれ以上を求めないけど、ふつうに何度かやりとりを続けていけば、必ずその疑問にぶつかってしまう。


だから実験的になんだけど、これからこの脆弱な関係をより濃いものに換えていくことにしてみた。ラヴフールを好きでのぞいてくれる人や、頻繁にメールをくれる人に対しては、僕は日常ふれあっている人たちと同等かそれ以上のもてなしをすることにしてみました。つーか、単に仲良くなろうと思った。だから、顔や声や温度や匂いに近いものをたくさん届けようと努力してる。最近は。話題に上った本や、曲を送ってあげたり、誰かの捜し物を出かけたときに気にしてみたり、実際会ってお話ししたり、電話を受けたり。その一部として顔の大きく写った写真とかばんばん載せてみたりしているわけですな、恥ずかしくもなく。匿名性がかっこいいみたいなスタンスは、ラヴフールにおいてはやめる。うっとおしく思われても仕方ない。そういうページにしたいし、ここは僕の王国だからです。


まだ始めたばかりだけど、効果は絶大。書き込みやメールもなんか肉体や体温が感じられて、とてもいい感じ。浅く広くに届かせるのとはまた別の喜びが、なんか以前より強く世界とつながっている感を伴いながら、僕の中を満たしているのが分かります。


今週も僕はまた初めて会う人がいる。おいしいカレーとかぼちゃプリンが待ってるらしい。ラヴフール素敵。素敵すぎ。