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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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映画「CUBE」

CUBE [DVD]

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目が覚めたらいつの間にか囚人服を着せられて、4畳半ぐらいの立方体の中に閉じこめられていることに気がつく。6面ある壁の中央にはそれぞれハッチがついていて、どうやら隣の部屋へは行けるらしい。ハッチから見えるのはどれもここと同じようなデザインの部屋。いったいいくつ続くんだ? しかも6つの出口のうち5つは殺人的な罠が仕掛けてある。さてどうする?


この設定を聞いただけで僕は震えたよ。すごすぎ。もうほとんど「ジョジョの奇妙な冒険」の世界。6人の登場人物がひとつになって、この目的不明の危機状態から抜け出そうとするわけですよ。黒人の警察官、女性の医者、無気力なエンジニア、数学を習っている女子大生、7つの刑務所から脱獄した男、そして自閉症


彼らには何の罪もなく、この極限状態が誰による何のためのものなのかわからない。でも彼らが選ばれたことには理由があって、どうやらうまく力を合わせれば脱出できるかもっていう能力をみんな持っているわけです。


でも食べ物も水もなく、外の光もない閉鎖的で極限的な世界の中では、お互いがお互いに懐疑心を抱き、その不安を押さえることができなくなって、自滅的な道を辿るしかなくなる。何もしなくたって殺人機械に囲まれているのに、自分たちですすんでそうしてしまう。怖いねー。


そうした中で吹き出す普段は押さえ込んでいた様々な不満や、隣人に対しての拭えない不信感は、自分の輪郭を他者なしでは確認できない人間の弱さそのものだ。監督も言うようにテーマはその辺なんだそうです。多数決の多い方にいることに安心したり、好きだっていってくれる人を大事に思ったり、自分のしている仕事にプライドを持ったりとかね。そのエネルギーが負の方向に反転すると「罵倒」や「人殺し」なんていう自己確認になるわけです。


でも自己確認をするために他者がいる訳じゃない。ほめられたがりの僕でさえ、その輪郭は自分にしか判定できないものとして認識している。信じる力、その範囲のすべてが自分の宇宙で、中心にいるのが自分。宇宙から自分を抜いたすべてのものが世界。世界と宇宙の差は「自己」の存在、あるいは「意志」しかないわけです。これってバックミンスター・フラーのコトバですけど。


この映画には「キューブ」をつくったとされる黒幕が出てこない。黒幕なんていう安易な他者は、妄想や恐怖や欺瞞という「意志」とは反対のものの中にしか存在しないからだ。それを監督は許さない。そこがすごくかっこいい。自分を信じること、他者をわかろうとすること、その努力だけで僕らの周りはかなりずいぶんすっきりする。でも明日目が覚めてキューブの中だったりしたら、やっぱりおかしくなっちゃうかな。