DVDで「夏の花火編〜あさがお〜」という映画?を観ました。映画?って書いたのは1時間の作品だったから。もともとどういう目的でどこに供給された作品なのかよくわかんない。ものすげーダメな男と同棲している年上の女が、その男の短絡的な思考に振り回されて、誘拐を手伝って破滅するという話。でも惹かれるシーンがすごい多かった。たぶんそんなに響いてるのは日本でも僕ぐらいのもんじゃないかっていう地味な話だけどね。いろいろ検索かけたけど誰も感想を書いてなかったし。
話が反れるけど、僕が映像で惹かれるのは、映像美じゃなくて、呼吸の間だったり、構図に映った全員の気持ちが手に取れたような気になる瞬間。つまり映っている人の関心と、僕の関心が一致したときに僕はぐわーっと画面の中に引きずり込まれる。単にきれいな映像だと僕は構図の中にいつまでも入っていけない。お客さんになる。
登場人物が誰一人僕の知らない役者だったので、色のない演技って言うのはホンモノみたいでいいなと改めて思った。最近の日本映画は豪華キャストのものが多いので、どうも演技を演技としてしか見れないんだよね。もったいない。
そういう意味で「夏の花火」は登場人物の気持ちや心の動きが手に取るように分かる映像だった。エアコンのないアパートでブリーフだけで汗だくになる夏のうだる感じ。向かいのマンションの幸せそうな家族にいらだちを覚える感じ。愛情というよりは惰性と処理に近いセックス。ケンカして仲直り(猫なで声)。蛍光灯の下の肌の色。感情が伝わると次は匂いや触感が伝わってくる。夏の団地の周りの草いきれだったり、指先に残ったタバコの匂いだったり、車の匂い、夏祭りの神社の湿り気、白いふともものまぶしさや柔らかさ、女の涙の温かさ、血の匂い。
そこまで来ると、映像が体験に近くなってきて、物語の行き先に目が離せなくなる。自分の人生のようにはらはらしてくる。だから膨らみかけてきた物語が乱暴に終わらせられてしまうラストはちょっと納得がいかなかった。あと20分ぐらい水増しすれば、もっといろんな落としどころが考えられる気がした。対になってる作品で「冬の花火」っていうのもあるみたいだから今度見てみようと思う。
女の名前が志保で、ダメな男がそれを「シポー」って甘えて呼ぶのがかわいかった。呼ばれたときの彼女の困ったような顔(たいていろくでもないことで呼ばれるから)と、ふっくらした桃色の唇がエロかった。実際にその人がエロいかどうかは別にして、見た目がエロい人は大好きです。72点。