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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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スーパーカーラストライブ

takanabe2005-02-28



スーパーカーのラストライブに行って来た。新木場は海のそばなので風がびょーびょー吹いていて寒さで耳が痛かった。客層は明らかに僕より若い20歳前後が大半で、チケットを買えなかった子達が、寒さで鼻を真っ赤にして「チケットを譲ってください」と書いた紙を持って50人近くも立っていた。僕はチケットを買えずに、オークションで5倍近い額を払って買った社会人なので、そんなことができっこない学生にはなんか悪いことをしたような気になった。


会場でけいちに会った。この寒さの中ですでに戦闘態勢なのか「SPCR」のTシャツ姿。僕も実はこっそり一番古いカタカナロゴのTシャツを着てるんだけど、風邪を引きたくないので一枚も脱がずに着込んでいた。ライブの前はいつもそわそわするもんだけど、この日のみんなはやっぱ複雑な気持ちで、終わりの始まりを待っていたんだろうなと思う。そういう言葉にならない卒業式みたいな空気が感じられた。


予定より20分遅れて公演がスタート。緑のレーザー光線でスクリーンに今日の日付と会場とスーパーカーの名前が描かれる。あぁ、ほんとに最後のときが始まっちゃうんだな、と思う。


そこで始まった曲は「White Surf Style 5. 」。否応なしに一番盛り上がる曲からのスタート。飛び交うレーザー。狂喜するみんな。スーパーカーの曲はレーザー光線のレトロでチープな未来感が良く似合うと思った。


つづいて「Fairway」。Futuramaじゃない、バンドアレンジな感じで力強い。コーダイのドラムは安心して聴けるくらい上手になった。そんで1stからのハイテンションチューン「My Way」で疾走感をどんどん高めていく。相変わらずナカコーの鼻モゲラ語だったけどね。よく考えると「My Way」を日本語で唄っているナカコーを一度も見たことがない俺だった。ジュンジかわいそう‥。


懐かしさでいっぱいになったところで色を変えて「PLANET」のイントロが。ちょっと涙が出そうになる。プラネットはしばらくラヴフールの国歌だったくらいの、僕のモラトリアムテーマ曲だったからね。胸が一杯になった。今日はさびをいじって唄わない、フツーバージョンのプラネットだった。「今にも別れそうだろう? あの日と同じルールさ」。


余韻を残したまま「Love Forever」。この曲のPV好きだったなぁ。白い部屋が無限に続いている部屋で、ナカコーが迷っているやつ。最後の扉を開けると、分娩台で自分が赤ちゃんになって生まれる瞬間でした、みたいなね。「ふたつの道には、ふたつの意味が」。


「Recreation」「Wonder Word」と温かい曲が続く。「WARNING BELL」がかっこよかった。マイナー調にアレンジされた、泣きメロ構成。響きがすごい悲しくて、それでいて冷静で、胸が苦しくなる。


「STROBOLIGHTS」でやっとミキの声を聴く。この日のミキはアンティークドレスみたいなのを着ている。背が低いのでそういう人形みたいでもある。途中歌詞を間違えてちょっと笑っていた。かわいい。


続いて「YUMEGIWA LAST BOY」。最近知ったことだけど、スーパーカーの興味がない人たちにとっては、この曲が彼らの代表曲になるらしい。「あぁ、ピンポンの曲やってた人でしょう?」みたいな。この曲のイントロが始まったとき、「White Surf」ぐらい会場が盛り上がったので思い出した。


「Sunday People」。今日の選曲だとなんとなくこの曲がセンターなのかな。ポップでチープで甘酸っぱくてレトロで未来な感じを全部詰め込んでみんなに愛されている曲だと思う。ミキのコーラスもかわいいから、バンドらしさも引き立つし。


ベスト版的な選曲の中で、コアなファンをくすぐる選曲が何曲かあって、最初の曲が次の「I need the Sun」。よく考えたらライブで聴いたの初めてだったかも。デビュー当時コーダイが一番好きな曲だと言っていたな。


続けて「Lucky」。これもみんなに愛されてる名曲。イントロを聴いただけでみんな大喜び。分かりやすい反応にナカコーもつい笑顔になる。Answer のツアーのときは、すごいキラキラした新アレンジで感動したけど、今日はオリジナルアレンジだった。


くすぐり曲の2番目が「Easy Way Out」。僕にとってはFuturamaでゆいいつの捨て曲なんだけど、けいちは今日この曲をすごく聴きたかったらしい。念願叶ってよかったね。


「Seven Front」も今日の選曲にはぴったりの、ライブでおなじみの盛り上がり曲。シングルにカップリングされた特は1日50回ぐらい聴いていた記憶がある。ギターのハウリングをさせているナカコーは本当に楽しそうだ。


次の曲が意外! 最後に取っておくかと思ったらなんとここでやっちゃいました「cream soda」。書き割りのような青春の歌詞が、ナカコーの唄うときの心情とさっぱり合ってないあの矛盾感が不思議な魅力だよなぁ、といつも思う。


「cream soda」を演奏してしまったらじゃあ最後は「Hello」かなと思ったらその曲まで続けて演奏。まさかこれが最後なんじゃ?と気持ちがまとめに入ることをせかし始める。


Helloのギターがゆっくり鳴り止みながら、そこにかぶってくるのは聴きなれたイントロ、「Free Your Soul」。4つ打ちの力強さと開放感が最高に気持ちがいい。よかった!まだ続くんだと思いながら、ラストへの心の準備&想像を始める。


次が「STORYWRITER」。HIGHVISIONの中でファンサービス的に入れられたポップチューン。置き去りな感じの曲の終わり方がいかにもナカコーで好き。


そして「karma」。もう全然最後の想像が付かない。「Karma」も2倍ぐらいに水増しした激しいバージョンで、4人は最後の力を出し切るように感動的なアンサンブルを見せる。いったい最後の曲は何? 「Siren」? 「Fox, Dogs And Doves」?


嵐の後のエピローグのように始まったイントロに涙が出そうになる。それは「Trip Sky」。う、わー! そっかー! 頭を鈍器で殴られたような衝撃がありつつも、それが瞬時に理解へ変わっていく。スーパーカーは轟音のロマンティストだったんだなぁ。

描いた夢のまま静かに
浮かんでまた消えていくのさ
すさんだ世界の向こうへと
浮かんでまた消えてくのさ


ここではないどこかへ。でもそれは逃避じゃなくて、より現実的な未来を目指した果てしない上昇。悲しいギターの轟音が13分続くリフレインを経て、いつものようにナカコーは鳴り止まないギターを置く。MCどころか「さよなら」の一言もなく、片手を上げてちょっとだけ笑って、舞台袖に消えていく。他のメンバーの顔には表情はない。


アンコールは鳴り止まない。「Last Scene」が流されている会場で、僕もなんとなく手を叩きながら、でもアンコールでやる曲ってもう何にもないじゃん、と思っていた。感動的でも感傷的でもない演奏だったけど、そして最後らしくもあんまりなかったんだけど、集大成という意味で、完全に網羅されたライブだった。


会場を出ると、大きなサインボードに「Thank You Supercar」と書いてあった。みんなはそれを最後の言葉として忘れたくなくて、携帯電話のカメラで次々に撮って行った。無言が似合いすぎるバンドだよな、と僕もそれを撮りながら思った。


もう彼らの新曲を聴いたり、ライブを見ることはないんだろう。その悲しさや、失われたものの大きさは後から来るのかもしれない。でもその日の僕はひとつの大きな時代が終わったというより、新しい季節がやってくる時のようなそういう静けさの中にいて、またいつか今より高い位置に上った彼らに会えるといいと、素直に思ったのだった。なぜなら、彼らから受け取ったたくさんのもののほとんど全部が「希望」の色に染められていたことを僕は忘れてはいないから。


愛想笑いの出来ないぶっきらぼーな僕のヒーローに、さよなら。