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はてなダイアリー版(1995〜2018)の過去ログです。更新はありません。

CD「鳥が飛ぶ意識」松崎ナオ

女性ヴォーカリストとかミュージシャンがむやみに溢れてうっとおしい今日この頃ですが、どんな感じですか? 僕的にはスーパーカーのセカンドの発売日に背中合わせでこっそり「宇多田ヒカル」をHMVのレジに運んだ覚えがありますけど、彼女の言い訳のない潔さやええカッコしいじゃないとこや自意識が等身大なとことか、完璧すぎて感想の一文すら書けない感じ。ああいう圧倒的な光の強さで、なんか「女性性」みたいのを訴えたり「私は他の人とは違うの」って顔した輩の目を覚ましてくれたらずいぶん楽になるなぁと思います。非凡な才能って説明が要らないんだよね。サブカルチャーとかね、さっさと撲滅しちゃって下さい。


ところで、松崎ナオです。なんかね。彼女もあれよ。話したことはないんだけど、前から廊下で目が合ってたタイプのそれ。ジャケットの写真とか、選んで拾ってくる言葉の種類がいつもいい感じ。学校の屋上の染みとか、二人でした花火とか、シャツ越しの体温を感じるような、そういう懐かしいやさしさを思い出させてくれるね。デビューしたときから気には掛けていて、タイミングが合えばいつでもリコメンドしようと思っていたんだけど、なかなかみんなにオススメ!って感じにまでいかなかったのね。でも行ったさ、今回。一緒に買ったグレイプバインソウルセットの新作をぶっちぎるかなりの傑作が生まれたね。これがその3曲入りのマキシ「鳥が飛ぶ意識」です。


「息苦しくて笑う 本当はただ会いたいよ あなたの夢を空を 叶えるためただ走る」


「あなたはいないもういない 違う空を目指してる ボクはボクであるために あなたにはなろうとしない」


この曲はシングルで、速いテンポのナンバー。唸りを上げて走り出すリズムギターと、そのリフとは実はあんまり関係ないメロディーのからみとかすごいぞ。なんかブランキーとかに近いかも。詞の内容も抑制のある抽象度で、完成にはまだまだ届いていないもどかしさが逆にいい感じ。女性らしい感性というよりはむしろ男性的な理性部分が僕の気を引くのかもしんない。松崎ナオのファンがどんな人が多いのか知らないけど、案外女の子ファンは少ないかもしれないね。


残りの2曲「passin' away」と1stミニアルバムからのリカット「白いよ。」もシングル曲と対比の利いた、打ち込み系と、しっとりヴォーカル系。この3曲の作るトライアングルがでかくて美しくて、お互いに反響して響き合い、より大きな形を作っているのを感じます。どの曲も「今はここにいない大好きなあなた」を想って歌っているつながり。でもこの人はきっとその気持ちを「本当のことだから」って理由だけで、むき出しのまま相手に突き立てたりはしないんだろう。詞を読むと素直な気持ちをむやみに伝えることがどれだけ鋭いナイフになるかをあらかじめ知っている気がします。さきっちょが微妙に軽く丸めてある。他のミュージシャンとは違う一歩引いた表現ができるのはそうした冷静な判断なんだと思う。彼女にとって「歌」ぐらいのドライな制約と抽象度がフィルターとして必要だからなんだろう。


「もしボクに魔法少し使えたなら あなたの笑顔がもう一度 もう一度見たい青空の中にいる気分教えて ボクはカンタンなコトバで歌にして送るね」


「笑い合った日々 哀しんでた日々も 今のボクには白く光る 何も見えなく 何も聞こえなくなったとしても 今のボクには白く光る」


ビデオもたまたま見かけたことがある。薄暗い部屋でやるせないぐらい小刻みに揺れながら彼女が唄ってた。「あなたはいない、もういない」って舌足らずな声でわめいていた。頼りない少年のような華奢な体に対してアンバランスな感じに目が強く光っていた。美人じゃないけど目が離せなくなるタイプ。特にめくれた唇とそこからのぞく小さく並んだ白い歯。(ちょっと空きっ歯)。がキュートです。宇多田ヒカルウンジャマ・ラミーに続き、ぶうこリスト1999に認定。


たった3曲なのにアルバムを買ったようなスケールと充実感に浸れること請け合い。これで1200円っていうんだから、食事でもしたつもりで聴いてみることをオススメします。以上。