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映画「かぐや姫の物語」

takanabe2013-12-13



誰もが知ってる日本最古の物語を21世紀に高畑監督が肉付け、演出をつけた、と言った感じの作品です。筋書きが変わっていることを期待したのですが、捨丸という憧れのお兄さんキャラクターを追加した以外はびっくりするほど教科書通りの展開でした。

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現代的な価値観を持つ、月の民「かぐや姫」はなんらかの罪の罰によって地球に送り込まれます。地球の老夫婦のもとで育てられて、「たけのこ」と呼ばれるほどあっという間に成長します。おじいさんが導く、身分が高い人向けの教育を受けて、生活が派手になっていくに従って、山での生活を懐かしみ、どんどん元気がなくなってしまいます。誰にも理解されず、すれ違い、ついには月のお迎えを呼んでしまいます。しかしかぐや姫は本当は地球での暮らしが大好きでした。
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原文ではわかりにくかったかぐや姫の心情や性格に、現代の女の子的な肉付けがしてあり、当時の文化を不思議がって受け入れられないフツーの女の子、として描かれています。それでありながら、案外かぐや姫側にはあまり同情できなかったというのが僕の感想です。というのは、かぐや姫はいろんな疑問や不満をまき散らした結果、周りの人を一人も幸せにしないで月に帰ったからです。我が道を行きたいのなら、一人でも幸せにしてみろと思いました。その点に関して、血のつながりもない子供に、当時与えられる最高の教育と生活水準を守ろうとしたおじいさんは、かぐや姫の感情を再優先しなかったこと以外は、何も咎めれることはないし、最愛であることの表現であったはずなのに、一番かわいそうだなと思いました。


表現デザイン面においては、筆っぽい輪郭線や淡い塗りがかなり挑戦的(手間が掛かり過ぎる)ですし、キャラクターデザインも、かぐや姫の次女がパタリロ似、ミカドの顔がしりあがり寿調、かつ、三宅一生っぽい服という大胆すぎる造形なのに、見終わるとしっかりきっちりはまってる塩梅だということもわかります。またクライマックスの月からの迎えに来たシーンは、これでもかというほどの圧倒的なパノラマ感+この世のものっぽくない音楽で、頭がぐわーんとやられます。


ストーリー的な起伏とは全く関係のない日常的な仕草に過剰と言っても有り余るぐらいの情報量と芝居を与えているのもすごいです。そう言う意味ではずっと目が離せない映像が2時間17分ずーっと続くとも言えるわけで、ちょっと疲れるのも事実です。2回以上見ることを前提に初回はさらっと見たほうがいいかもしれません。


そんなわけで、お話的にはすっきりしないけど、表現や演出のすごさで余裕で1800円の映画代以上のものが返ってくる、そういう作品でした。