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アニメ「COBRA THE ANIMATION」

2008年に制作されたコブラのアニメビデオ作品を紹介します。

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この作品はコブラの26年ぶりのアニメ化、かつ30周年を記念して作られたものです。作者の寺沢武一が絵コンテ脚本監督までを務めています。


声を昔のTV版同様ブルース・ウィリスなどの吹き替えで有名な野沢那智が演じています。彼が演じないなら作る意味が無い、作らせないとまで言わせたそうです。


声は歳のせいか、いまいち締りがないところはあるものの、この作品の後2010年に亡くなっていることを考えると、あぁ、亡くなる前にコブラをアップデートしてくれてホントによかった、と胸をなでおろしたくなるくらいのはまり役です。


僕は少年ジャンプで連載されていた頃からコブラの大ファンで、その頃は小学生だったので、超人的な身体能力や、酒や葉巻、セクシー美女などの大人っぽい匂いに憧れて「かっこいいなー」と思っていたのですが、当のコブラより歳をとって40を過ぎて改めて見なおしてみると、コブラのかっこ良さというのは、あまりに普遍的な人間臭さにあって、それは野沢那智が同じく演じた、ダイハード1のジョンマクレーン刑事とダブるんです。


ぽろりと吐く弱音や減らず口、信じられないようなドジ。それでいて死が迫れば迫るほど落ち着きを払って口角を上げていくあの、アメリカ映画的なヒロイズム。血に汚れ、痛みを堪え、嘘をついてでも真実に立ち向かっていく姿勢。超人的なのは身体性能ではなく、決意の揺るがなさのことなんじゃないか。自分も気持ち次第でここまでかっこ良くなれるんじゃないかと視聴者に錯覚させるキャラクター造形です。


ちなみにコブラは1978年、ダイハードは1989年です。つまり単に性格や行動が似ている二人というだけでなく、マクレーン刑事の吹き替えが持つイメージの中に、多分にコブラの血が流れているとも言えるんじゃないでしょうか。


それに加え、ずるがしこい敵役の魅力もあります。勝気で裸同然のコスチュームの美女が、そんなコブラに翻弄されながらも心も体も開いていく過程。コブラがどこで何をしていようと母船の中で静かに待ち続ける頼れる女房役のレディ。どんなピンチも切り抜ける万能小道具の葉巻メカなどのガジェット。そういう表面的なドキドキもたまりません。


コブラが普遍的な面白さを持っているのは、偶然ではなく意図的なことで、ジャンプコミックス2巻の作者コメントが秀逸です。全文引用しましょう。


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SFは、シンセサイザーの音で飲むコーラとは、ちがうんだ……。
SFーーそれは、新しいビンにいれた古いブドウ酒なのさ。
そして、それは『アーサー王』や『アリス』の不思議の泉から、わきでたものなんだ。
コブラ』は古きよき時代の西部のアウトローといったところだな。
あ〜、西部の血がさわぐ!」
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寺沢武一は1955年生まれですので、このコメントを書いた当時は25歳となります。25歳で世に出たクリエイターだったら、自分のオリジナリティや新規性はすげーだろ!と訴えるほうがフツーな気がします。それなのに、新しいのはスキン(見た目)だけで、これは何度も普遍的に受け継がれてきた物語だよ、と言っています。すごい。人間ができてるというか、創作に対する向かい合い方を感じさせるコメントです。工芸的な発想です。


アニメ自体の出来もよいです。オリジナルの作者が監督したアニメや映画はろくなものがないと思っていましたし、静止画と動画の良さというのは、信じられないほどそれぞれ別モノですので、かなり冷たい気持ちで見始めましたが、1話を見終わる頃にはすっかり興奮してしまいました。その理由は割り切り方、捨て方のちょうど良さだと思います。オリジナルの作者なのに、変に力が入りすぎたり、冗長なところがなく、ストン!とできてます。雇われ監督か!って思うくらい適切で無駄がない清潔な出来栄えです。だからこそ、要所要所でコブラの吐くベタベタな決め台詞がググっと効いてきます。CGとの合成も違和感を残してもいいような処理をわざとしていて、オリジナルの漫画でもいち早くCGを使用してきたパイオニアであるからこそ、捨てるべき部分をわきまえているのかもしれません。本当にびっくりしました。


40歳になって見なおしたコブラは、ただ単にかっこいいモテ男と言うより、大人が示すべき痩せ我慢、危機管理能力、揺るがない気持ちを行動で見せる姿勢そのものにあるような気がして、その視覚的ご褒美としてのモテっぷりっていうのは島耕作や007に近い見え方ながらも、ずっと親近感がわく気がしました。人生の、そして男としての先輩っぽい。いつでも心にコブラを見ていたい。そんな感じです。


1998年から闘病中だそうですが、何度でも繰り返せるコブラの物語は21世紀もちゃんと生き続けていることが確認できたので、作ってくれて本当にありがとう、という気持ちになりました。できれば漫画でもアニメでもなんでもいいので新作が見たいです(2年ぐらい前のハリウッド実写化の話はどうなったんだろうな)。