「ファンタジー」の定義みたいなものを時々考えるんですけど、剣とか魔法とかそういうことじゃなく、「在りもしないことが在るかのように描かれているもの」っていうのがファンタジーなんじゃないかと。
平たく言えば、「信じたい方の嘘」帰り道、いつもの通りの一本向こう側を曲がったらそんな話に続いていくんじゃないかっていう、そういう実在感。
この本、本屋さんでジャケ買い&タイトル買いしたんですが、想像通りの質の高いファンタジーで、僕のツボにぴったりでした。
漫画短篇集なんですが「勇者」「魔王」「竜」「宇宙人」に「神様」と、文字だけ見たら使い古された空想のキャラクターに、新しいリアリティを息づかせています。
中でもケンタウロスと人との現代生活を扱った「現代神話」と表題の「竜の学校は山の上」はすばらしく、どちらも普通の人の普通の感情を追っかけながら、ケンタウロスや竜が身近にいる生活をリアルに想像させてくれます。
物語が面白くなる要素っていうのを、仕事のこともあり、ここ2年ぐらい考えてますが、50%以上は「身近なあるあるネタ」であることが重要で、それがないと嘘が嘘として活きてこないんですね。若手のお笑いで尖ってばかりいていまいち笑えないコンビなんかも、その比率がまだ甘いのかもなぁ、とか思いながら最近は見てます。残りの半分は「知的好奇心」と「意外性」でしょうか。
意外性っていうのも、誰かが死ぬとか世界が滅ぶとかそういう突飛さである必要はなくて、ケンタウロスや竜が身近にいたら、AであったものがBになり、Cになることが考えられる。っていうのを感情の流れに沿って丁寧に追っていくことなんじゃないか。そういう当たり前の方法論のはずなのに、なかなかどうして誰にもできないそういう偉業をきちんと成し遂げている珍しい作品です。というか好きです。オススメ。