somewhere <初回限定仕様> [DVD]posted with amazlet at 11.11.01TCエンタテインメント (2011-10-05)
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ソフィア・コッポラ監督映画の4作目です。
バツイチ、別居中の娘ありのイケメン俳優が、行きずりの女性たちとダラダラベッドを共にしながら、退屈で空っぽな人生を自覚するという話。
雰囲気ものだし、メッセージ性という意味では本当に中身がないし、セレブならではの冷笑的なスノッブ感だけで2時間を回しているんですが、不思議と嫌な感じがなくて、むしろ心地よい。
例えば美大には、ヨガ教室に通うような感覚で、特に表現したいこともその必然性もない金持ちの娘がぼんやりといたりするんですが、それに近い感覚で、「こういうの、アリだと思うの」っていうふわっとした思いつきを、なんの精査もなく、気分をそのままきちんと映画という表現に落としてくれる優秀なスタッフに囲まれているのがうらやまけしからんと言うかなんと言うか。
セコセコと企画書を書いて、いろんな人の顔色を伺いつつ調整して、限られた予算と時間の中でヒーヒー言いながら作ったものとはまったく対極にある、ゆったり感とそのまま感。漠然とした言い方で言えば「空気感」。21世紀的な共感としてはけっこう特殊な感じです。憧れもしないし、あるでしょうねこういう世界、とも思わないし、反面教師にもならない。でもダラダラといい感じ。
この感じ、何かに似てるわーと思ったんですが、80年代の村上龍の長編小説「テニスボーイの憂鬱」でした。30代で社長業をやっている主人公がテニスと二人の愛人遍歴と家族と過ごした時間を思い出しながら、ぼんやりと黄昏れる話。課長島耕作じゃないけど、「あぁ、わかるわかるその感じ」って思うのは、男性のほうが多いのかも知れません。
2時間のうち半分ぐらいがタバコを吸ってるか、ビールを飲んでるか、寄ってきた女を構っているかという非生産的なシーン。
長回しのカットや、決めすぎていないレイアウトや、付いているか付いてないかわからないぐらい自然な音楽が、どれも伸びやかで素晴らしく、逆に言うと、寓話としてのまとまりを意識したいくつかの説明ゼリフが突然&邪魔な気がしました。それでも彼女がまた新作を撮ったら見ちゃうんだろうな…。
11歳の娘役の女の子は「SUPER 8」のヒロイン役であるという豆知識も地味に良いと思いました。