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TV番組「仮面ライダーオーズ」

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8/28に最終回を迎えた「仮面ライダーオーズ」を紹介します。仮面ライダーシリーズは、子供の頃「暗い」「気持ち悪い」というネガティブイメージを持って以来、全然興味がなかったので、子供が「ディケイド」に興味を持つまで全く蚊帳の外でしたし、その「ディケイド」も内省的でキザという、僕が一番嫌いなタイプの物語だったんで、今までの人生の選択は間違ってなかったと思っていたんですが、続く「ダブル」が欲張りですごく面白かったこと、DVDを借りて見た「電王」がそれを超えて突き抜けて面白かったこと、その人は大好きな「シンケンジャー」も書いている人だと知ったこと、そして続く「オーズ」がその電王の脚本家が書くということで、なんかもう来る時が来た的な期待感が目白押しでした。


で実際始まってみると、明るいけど深いしっかりとした世界観、ライダーや敵のデザインのかっこ良さ、スカを基調にホーンセクションを多用した明るい音楽、あと主役の若いふたりの異常にうまい演技に、ぞっとするぐらいのめり込んでしまいました。主題歌の大黒摩季もめちゃくちゃハマってますしね。


800年前に人間の欲望から生まれたグリード(強欲)という名の5人の魔物が現代に復活し、そのうちの鳥の属性を持った1人が寝返って仮面ライダーと共に戦います。魔物は大量のメダルから出来ていて、仮面ライダーもそのメダルを3枚使って変身します。メダルは人間の欲望から生まれるセルメダルというものと、グリードの存在そのものでもあるコアメダルの2種があり、自分の属性のコアメダルを9枚集めるとグリードは完全体になることができます。一方仮面ライダーもそのコアメダルを3枚揃えるとそれぞれの特性を活かしたコンボ形態に変身することができます。グリードと仮面ライダーの間でメダルの奪い合いが起こり、どちらが早くメダルの総取りが出来るかを競うのが、物語の骨子です。


最近の物語の傾向として、主人公格に「天才」を置く、というのがあります。80年代ジャンプ黄金期に対するカウンターでもあります。つまり「努力」ではなく「才能」や「持って生まれた素質」「血筋」がより重要視される傾向です。オーズの場合、それは寝返ったグリードであり相棒となる「アンク」がその位置にいます。5人のグリードの中でも他の4人を出し抜くだけの実力とスピードを持っています。だけど、うまいな、と思わせるのは、そのアンクが「右腕」しか復活しなかった、肉体的に不完全な存在だということです。ここに、明るくほんわかとしてつかみどころのない(でも実は抜け目ない)主人公の体を頼る必要が出てくるのです。「ダブル」でも、あたまでっかちの天才と、情熱だけの半人前探偵のペアでしたがそれを踏襲してます。でもやはり、人気があるのはつかみどころがない主人公ではなく、アンクの方ですね。アンクは非常に個性的で、口は悪いし、人の言うことは聞かないし、アイスばっか食べてるし、でも時々弱いところも見せたりして、人間臭いんです。真似したくなる名ゼリフもアンクが一番多かったんじゃないかなー。


最終回でもこの話は、ほんわか主人公の決着として、というより、アンクが納得して死んでゆく話としてまとめられていて、その満足を得させた対象として主人公は存在は立っているんだけど、注目を集めるのはアンクの生き様の方だったなー、(でもそれがいい)と思いました。あと平成の仮面ライダーはどんどんいろんなフォームが出てくるんですが、たいてい最後は最強フォームか基本フォームで決着するところを、オーズでは、どっちかというと不遇な宙ぶらりんの存在だったアンクのフォームで決着するところも、ずらし方が非常にうまくハマってました。いや、ハマってたとかは実際どうでもよくて、泣きました。


不安がより大きくなっていく時代を生きていく子供たちの見る物語として、ヒーロー物というのは顕著に時代を反映します。大人が自身で成せなかったこと、大人が本来そうなりたかった大人像、つまりは希望の形が描かれるのだと思います。「欲望」をテーマに始まった物語は「手を取ってつながっていけば、ずっと遠くまで届く」というメッセージを以て終りを迎えます。一人で背負い込もうとしていた困難が、主人公の理解によって少しだけ楽になっていくのを感じます。その理解を見届けて腕しかない怪人アンクが「お前がつかむのはもう俺の腕じゃないってことだ」と満足して消えてゆきます。二人三脚が、100人101脚になるような、でもそれですべてが解決するほど綺麗事でもないけど、でもそうやって身近な最初の一人に手を伸ばしていくことでしか世の中は変わっていかないんだってことを、30分(実際には22分ぐらい)の中でよく言えたなーと思えるすばらしい最終回でした。