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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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ポップソング

takanabe2008-10-03



インタビューを受けていた。インタビューとはちょっと違うかも。砂時計とマイクの前で15分間独白する。インタビュアーは相槌は打ってくれるけど、進行するわけでも、誘導するわけでもなく、そこにいるってだけ。だから僕は自分で話したい事を決め、15分それを広げて、自分で「終わり」って言わないといけない。実際には18分話していたそうな。


「カメラを向けると人は踊り出す」と言ったのは確か大島渚だった。マイクを向けられてもそうだろう。自分でも思いも寄らないことを言い始めたりする。そして時間切れになって、頭に上がった血が下がってくると「あぁ、ぜんぜん言えてなかったな、矛盾もあった」と反省し始めるんだけど、でもたぶん読み物としておもしろくなるのはそういう吹きこぼれみたいなところなんだろうなとも思った。


伝えたい事がある人が聞いてもらいたくて話すわけじゃないので、マイクがオンになってから仕方なく考え始める。でもせっかくマイクで記録されるわけだから少しはちゃんとした事を言おうという意識が働く。そうするとほとんどすべての人が今自分が抱えてる一番大きな問題に正面から向き合う事になる。しかもそれは解決してない現在進行形だから、15分でオチが付くわけでもなく、その問題の周りをうろうろした軌跡だけが記録されていく。


それを読み物として読み直すと実際には話している問題やジャンル自体はどうでもいいことが分かってくる。その人が正面から取っ組み合っている対象に対して、今までどんなアプローチや取捨選択を試み、それに対する視点の数をいくつ持っているかということがたった15分で暴かれていく。それはつまり人生の歩み方の説明そのものだったりする。共感が生まれるのはそういう部分だ。


そこにはその人自身の正しさの設定、それを実現化するためのリソースのやりくり、失敗、それらを踏まえたうえでの未来への展望のすべてが入っている。人生の様々なステージにおける問題とダブっていくうちに、最後にはひたむきな姿勢と願いだけが純化される。魂が音と文字として定着するような。それぞれのオリジナルでユニークなストーリーは、いつのまにかありふれたポップソングのような強くシンプルなメッセージを伝えてくる。人の話を聞くおもしろさはそこにあるんだと思う。