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映画「おまえうまそうだな」

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絵本には2種類があって、1つ目は純粋に子供たちを喜ばそうと思って作られたもの。2つ目は絵本という体裁を借りて、作者の心のメッセージを絵と優しい言葉で噛み砕いたもの、があります。で、2つ目の場合はメッセージがまずありきで、目的として「子供を喜ばせる」ということは副次的なものだと考えられている節があります。


この「おまえうまそうだな」は、恐らく2つ目のパターンで出来ているもので、絵本や児童文学の枠を借りつつも、実際には「大人が子どもに読ませたい本」の典型であると思います。裏を返すと「子供はそんなに見たく(読みたく)ないかもしれない」ってことです。子供のほうから「この映画見に行きたいから連れていって欲しい!」と言われることはまずないんじゃないかな。


実際、娯楽要素や爽快感が少なく、人生におけるいろんな葛藤に満ち溢れています。だから別に無理して子供を出汁にしなくても、恥ずかしがらずに大人が大人と観に行けばいいんだと思います。


草食恐竜に育てられた肉食恐竜のジレンマ。これは異文化の共生とかいうレベルではなくて、基本最後まで平行線であるはずの関係性です。騙し騙し幸せな今日を重ねるほどに、長期的な意味では矛盾や葛藤が積み上がっていきます。物語としてこの話が優秀なのは、「親父越え」と「乳離れ」を同時に成立させているところですね。90分に満たない時間の中で声にならないシーンが何度も胸を締め付けます。


感動や涙を売りにする話はそんなに好きじゃないんですが、いろんな表現の塩梅が行き過ぎてないし、誤魔化してもいない絶妙な感じで、なかなか大人の味わいでした。