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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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借り物

takanabe2010-05-21



今ここにない何かを説明するときに、みんなが知っている何かで置き換えて言うときがあって、それを僕は「借り物」と呼んでる。「借り物」にはいい面と悪い面があって、いい面は、大幅に説明を端折れること、オリジナルが持っているポジティブイメージを引き継げること、悪い面はオリジナルを深く知っている人の、それぞれ経験にイメージが引きずられ誤解されてしまうこと、そもそもの真意が伝わりにくくなることなどがある。


ゲームの設計中でも、企画チームだけで話し合う際に、そう言った「借り物」を使って意思疎通を図ることは日常茶飯事で、そしてその「借り物」を使った回数分以上の誤解を毎回解かないといけない羽目になる。便利なんだか不便なんだか微妙なところだ。


説明する相手が同業の場合はまだいいけど、他社の人や、そもそもゲームを良く知らない人の場合に「借り物」は禁じ手。名前だけが一人歩きして想像もしてない方向に誤解されてしまうことの方が多いからだ。


設計をするときのそれぞれのエレメントも、形がない初期にはそんな風に「借り物」の寄せ集めから始まったりするけど、あるタイミングで必ず、その題材でしかありえなかった新しい何かが生まれることがあって、それを軸にすべての要素を再構成しなおすと、その新しい秩序によって「借り物」の寄せ集めではない何かに変わり、すべてが輝きだす。ついさっきまで混然としていた本質と装飾の区分が善悪のように感じられたりする。そういうクリエイティブをプロジェクト期間に何回起こせたかで、モノの完成度は飛躍的に上がっていき、それぞれのエレメントは毎回別の角度から繰り返し繰り返し磨かれていく。「借り物」が「本物(オリジナル)」に生まれ変わる瞬間だ。一人でいっつも狂喜乱舞しちゃう。


コンセプトありきで物事は進むように思う人は多くても、実際のところ、サラリーマン的な意味での創作期間の半分近くかそれ以上は「ホントは何がコンセプト?」っていうのを探って知る時間になることのほうが多い。そしてその本質に運良く気づけたとしても、完成や売れ行きがそのコンセプトによって保証されるわけではないので、モノヅクリで食べていくという覚悟の難しさはホント半端ない。そこいらじゅう落とし穴だらけだもんな。それでも「借り物」じゃない何かを1個でも多く生めたらいいなと思って、今日もがんばってます。