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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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情熱

takanabe2005-02-17



今のプロジェクトで学んだことはたくさんあるけど、一番の収穫は天才音楽家に出会えたことかもしれない。前のプロジェクトは職人肌な音楽集団が曲や効果音を作ってくれて、すべての効果音や曲調は、僕の一存で(えらそー)決めることが出来た。僕が欲しい音の状況や感情を言葉に書いたり、電話口で口真似したりして、たしか20曲ぐらいと、300ぐらいの効果音を作ってもらった。僕のイメージに合うまで何度もリテイクしてもらったけど、最初の曲がOKになったあとは、任せておいても同じスピリットの曲が出来てきたりして、以心伝心じゃん!(意思疎通じゃなくて)とかわくわくしたこともあった。だからそうして出来上がったサウンドトラックは僕という個人の秩序できれいにまとまった気がしてる。宝物だ。


その一方で今のプロジェクトの音楽家は、それとはまったく異なっていて超天才肌。フツーの効果音とか頼んでも全然作ってくれない。最初は自分が欲しいと思った素材がきちんと集まらないという点で「うーん、困った人だなー」と僕は思い込んでしまっていたんだけど、ちゃんと話し合うと、音を貼る対象をどこまでも深く観察していることが分かってくる。頼まれたものを頼まれたようにだけ作るのは絶対にやらない。観察し尽くして、そこでつかんだ根っこに、自分独自の切り口と、ポップな客観性を同時に盛り込んでくる。だから話を聞いていると作りたい音に対して先入観を持って、記号的なものやどこかで聞いた既存の音の焼き直しをさせようとしている自分がだんだん恥ずかしくなってくるのだった。(関係ないけど僕がオタク文化を嫌いな理由は、記号的なものの安易な焼き直しを様式美に置き換えようとするそのいやらしさにうんざりするのかもしれない、と思った)


だから、今の発注の仕方は「どんな音(曲)が欲しいか」「どんな機能を果たす音なのか」ではない。その音をくわえることで「どんな気持ちになって欲しいか」という説明。そうすると自然に音楽家から無数のアイディアが飛び出してくる。半分以上は、僕が思いも寄らないアプローチだ。その中で、どうしてもゲームの機能を阻害してしまう可能性があるものははじくけど、お互いの要望を満たしたステキな新アイディアが必ず生まれる。たった一つの1秒に満たない効果音に対して、作業に入る前に2時間ぐらい話し込んだりする。呆れるぐらいの熱意。


なんでこんなことを書いてるかって言うと、泊まるはずじゃなかったのに明け方の4時に満面の笑顔で「たかなべくん! ミニゲームの曲できたよ!」とか言いに来てくれて、しかも聴いてみると、一回聴いただけですげーサイコーな仕上がりだったりすんのがもうクラクラくるというか、癖になるというか。


モノヅクリってさ、いろんな衝動をエネルギーに変えてそこに注ぎ込み続けなきゃいけない宿命だと思う。その中でもコンプレックス系やダークサイド系、マゾ系とかは僕はすごい苦手で。でもそうじゃない崇い感じでエンジンに火を炊き続けられる人っていうのは、ホントに勝ち目がないな、と思うのでした。技術はともかく、情熱がある人って同じ業界でもそんなにいないもんねー。僕ももうちょっと体温上げないと。