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映画「夏至」

夏至 特別版 [DVD]

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ビデオで「夏至」を見ました。ベトナムの映画のようです。信じられないくらい色が綺麗だった。最近、匂いとか手触りを感じる映像が好きだ。多分、会社が地下で、毎日毎日パソコンのモニターばっかり見てるから「質感」に飢えてるんだと思う。例えば、旅行に出かけて吸収するのはそう言った普段のルーチンからは得られない「感触」だと思う。それは日光の違いであったり、風の匂いであったり、雨の音、水の色、建物の朽ち具合、食卓の匂い、草いきれ、言葉遣い、女性の化粧の仕方、肌の木目、日陰の湿り気具合だったりする。


この映画には三姉妹の、旦那を中心にした人生模様(不倫とか浮気とか)のようなものが語られはするんだけど、そんなもん全然字幕もいらないよってくらい、脚本自体、映像が存在するための便宜上のテキストでしかない。字幕を丁寧に追って一生懸命に物語を求めるより、肩の力を抜いて、その映像に身を任したほうがいいみたい。


特に強調されているのが亜熱帯植物の緑色。そしてその補色である赤の扱い。ベトナムと聞いて思い描くむっとするような暑さや泥っぽい感じではなくて、エスニック料理屋みたいな、ビビッドで、ウェットで、ちょっとだけスパイシーな感じの、西洋の感覚で整理された色使い。避暑地っぽい感じ。ちょっとかっこつけてる感じ。でも見ていてため息が出るぐらい綺麗。


ベトナムというお国柄(倫理的な意味で)かどうかはわからないんだけど、間接的なエロ表現がオトナだと思った。例えば主人公っぽい三女がまぁフツーに色っぽいんだけど、彼女が出てくるシーンはなんか常にどっかが濡れているとか、まどろんでいたりする映像ばっか。長い黒髪を髪を洗っていたり、家の外で三姉妹並んで、鳥の皮を洗って器用に剥いていたり、土砂降りの雨の中で匂いそうな汚い路地裏で雨宿りしたり。あとは兄弟でじゃれあったり、いつのまにか同じベッドで寝ていたり。


布と光のかかわりも綺麗だ。布が、光を通すもの、風をはらむものとして扱われて、画面の中になんともいえない優しさをかもし出す。音楽もほとんどなくて、水がぼたぼた落ちる音や遠くで鳥が泣く声など環境音が強調されているところもいい。


そういう美しいものに囲まれながら、男達は浮気やら不倫やらモラトリアムの頃から何にも成長のない悩みを行ったり来たりするし、女達はそんな男のやるせなさに涙しながらも、それらを包み込むように日々の生活を続けることを選ぶ。僕はそこに、行ったことのないベトナムの、おおらかさ、優しさのようなもの夢想した。誰かと生きるって、痛みを包み込んで、許しつづけることの繰り返しだと最近は思う。とても難しいことだけどね。あんな景色に囲まれて僕もより人間らしく生きたいな、とも思ったのでした。