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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

  ラヴフール(www.lovefool.jp) 

にじんでこぼれる(光)


光の速度で飛んでいった。結婚前夜の憂鬱と奇跡の桜。2回も空に駆け上がって、大事な温度を確かめ合った。あやふやな夜をぎりぎりでやりすごして、蜻蛉みたいに儚くて燃えるような時間のむこうに薄曇りの朝。そんな時間の悲しさには覚えがあった。


聞き分けのない女の子のように泣き散らかして、ぱさぱさになった気持ちを冷めたブレンドのわきに端からていねいに並べてみせた。もう同じことを繰り返すのはごめんだった。抱き締めたいのは温かく柔らかいそのカラダだけじゃなくて、求めているのは数字で割り切れるような硬質なものでもない。わがままで、自堕落で、愛くるしい、そんな圧倒的な力に任せたこの想いは、誰よりも君に通じると思ったんだ。


やがて謝るようにしてはにかみ屋の天使が笑った。僕はそれでやっと下界に帰る勇気を授かった。今、羽を失ったら、2度とこの景色を見れない気がしたから。


はめ殺しの窓を雨が叩き付けていた。僕は眠りの中でもその手を離さなかった。久々の重力に声もでない程疲れた僕に、天界からの鈴の音。


「もう、声が聞きたくなっちゃった。恥ずかしいね」


恥ずかしいもんか、と僕は思った。景色に色が表れて、やがて雲間から強い光が溢れ出した。