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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

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本「スーパーヒットゲーム学」飯野賢治

スーパーヒットゲーム学

スーパーヒットゲーム学

僕は「デザイナー」という職業に憧れてデザイナーになったんじゃありません。単に工作やお絵かきが好きで、それを都合よく続けたまま大人になるにはどうしたらいいかと考えてたら、どうやら工業デザイナーっていうのが一番それ風という触れ込みだったので、なりました。だからホントのとこは「絵や工作をして生活をする人」になりたかったわけ。まぁ夢達成率75%ぐらいの感じかな。


で、よく聞かれるのがどうして美大を出ていながらゲーム会社に入ったかって話なんだけど、普通は工業デザインというと「車」とか「オーディオ」「家電」あたりが花形なんだよね。まぁ、入学当時はそのつもりで僕もいたんだけど、社会的に不景気とかがやってくるとその隠された裏面が見えて来ちゃったんだな。


車はもう誰の家にもあるし、テレビやCDプレーヤーも、エアコンも電話も冷蔵庫も、みんなみんな持っている人ばかりで、お金がない時代にどうしても買い換えなきゃってひとがあまりに少ないんだよ。それはどういうことかっていうと、会社的にこれから斜陽産業ってことなので、まばゆい未来が待っているはずの僕がわざわざ沈みかけた船に乗ることもないだろうと思ったんだね。


で、これから急上昇株で、なおかつ楽しいことばっかり詰まってそうなのが、ゲーム会社だったって訳。工業デザインの基礎中の基礎である「インターフェイス(操作系)」のデザインはまだ昨日始まったばかりという感じだし、画面の向こうには何をしても無限に自由な3次元空間が拡がっているし、最先端の人たちがぐわーって集まって来るし、なにしろ映画とかと同じで、ストーリー、演出、音楽なんかを含む総合芸術だってとこがかっこいいじゃないですか。


まぁ、この辺の幻想は入ってから半分以上砕かれたりするわけだけど、ゲームそのもののすばらしさには、僕の目は未だにくらんだまんまだね。


ゲームには制約があって、それは容量だったり、基盤の性能だったり、コントローラーのボタンの数だったりと、外側から決まってきてしまう要素が多いんだけど、そのなかでやりたいことをなるべくゆがめずに、削って磨いて「魅力」や「夢」や「感覚」をワンパッケージに押し込めるという作業そのものが「デザイン」だと思う。


この本にはそうした今のゲーム業界の創世記を担った代表者6人(宮本茂、鈴木裕、飯田和敏堀井雄二遠藤雅伸岩谷徹)と飯野賢治の対談。このメンバーって言うのは単にヒットメーカーの重役ってだけでなく、ゲームそのものが「発明」であった時代を生き抜いた一番最初の「画面の向こう側デザイナー」たちだと思う。すばらしいヴィジョンを持っていたのはもちろんのこと、そのヴィジョンをどう整理したら「遊び」としてパッケージできるかってことまで責任が持てた最初の人たち。マルチな才能を求められる現代に最初に適応できちゃった才能の人たち。


この本にはその当時の心意気や発想の突飛さが溢れていて、ドキドキやうきうきがとまらなくなってしまいます。中には僕がいつもスケッチを持っていっては怒られたりしている上司が混じっていたりとなかなかスリリングな部分もあるけど、この本を読んでからだとプレゼンの心構えも少しは変わるやね。若きクリエイターなら必読です。