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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

  ラヴフール(www.lovefool.jp) 

はなちゃんからの手紙。

takanabe1999-04-01



HANA ROCKSのはなちゃんからベックのテープとお手紙をもらいました。さんきゅー。最近こんなんばっかです。甘やかされるのっていいなぁ。つーか、僕の場合、日常でも相当甘やかされて育ってますからね、大抵の親切は当たり前とか思っちゃっている不届き者ですけど。


ベックとはレコード屋で何度か目が合った。だってあいつこっちずっと見てんだもん。ぜってぇ意識してたよ、オレのこと。まぁ、ライバル心燃やす気持ちも同性としてわかんなくないけどさ、なんかこのまま変な意識をして一言も口きかないで高校を卒業するのもいやだったんで、はなちゃんのココロやさしい気持ちがいい助け船にはなったよね。おかげで僕とベックは無敵のバッテリーになって、3年の夏にはまさかの甲子園優勝を達成できたのでした。(?)


僕はもうここ数年間洋楽から遠のいてしまっているし、ベックのことは今までどんな作品を経てここへ辿り着いたのか、全く知識がない状態での初耳だったんで、あんまり多くを語りたくないんだけど、あれだな。あのね、この人、いい人。それだけはちゃんとわかるよ。体温がある。それも汗くさいくなくて「根性!」とかって書いてない方の、やさしく包まれる体温。それと余裕を強く感じた。なんか「自然体」とかをいきなり理想に掲げちゃっている人とかいるじゃない? そういうんじゃなくてこう排気量のでかい高級車がスッとホテルの玄関に音もなく停まるような、そんな余裕。ドアの「カチャリ」って音だけでぞくぞくするようなさ。ぜいたくな感じ。余興って言い方が一番近いのかも。なんか全力疾走してないし、だらけてもいないんだけど、楽器とか筆とかってさ、どんなにひどいのを使っても使う人が使うとそこに魔法が宿る瞬間があるじゃん。チラシの裏に書いたってプロの絵はうまいわけで、マックを買ってもCGデザイナーになれるわけじゃないみたいな。選ばれた人の作る音だなと思いました。これからもうちょっとよく聴いてみます。ありがとね。シアワセ。

漫画「七夕の国」 岩明均

物語のジャンルのひとつに「ミステリー」と言うのがあって、僕はそういうジャンルを片手に収まるほどにしか目にしたことがない。だって怖いの苦手だからね。だからその筋にはまったく知識がないんだけれども、僕なりに思ったことがあったのでそれを今日は話します。


例えば、あなたの好きな物語を思い出して下さい。その物語を好きな理由のひとつに「その世界に引き込まれたから」とか「主人公の気持ちがすごく分かるから」っていうのがあると話が早いです。それって「その物語を司る世界秩序がちゃんとしてて、その一端に自分が触れたことで、その世界の広さが自分の普段体験している世界の広さと同等以上だった時に初めて起こる感覚」なんじゃないでしょうか。いきなり結論まで飛んだけどね。


僕は「ゼルダの伝説」で草原を歩きながら朝を迎えてしまったときの青白い光や空気、ドラえもんが未来に帰ってしまったあとのがらんとした静かな部屋、松本大洋のマンガに出てくる藤沢近辺や江ノ電なんかに、すごく現実感を感じます。きっとその風景に「対応する経験」が深く肉体に刻まれてるからだと思う。


ミステリーの構造というのはそのざわざわとわき上がる現実感を「恐怖」や「不安」に置き換えたものだと僕は思います。


この物語は手から球状の光を飛ばして、その球体に触れたものを消し去ってしまうと言う超能力を持ったある村の血筋と、そこにまつわる不可解な七夕伝承を解いていくと言ったストーリーです。何の役に立つのかわからない、でも人を殺す道具にもなりうるその不気味な能力を軸に、どうにもやる気のない大学4年生の主人公が巻き込まれ型でその恐怖の端に触れ、村の不思議な伝承からやがて一本の事実らしきものと、今この世界を生きることの価値を見いだすまでを描いています。


たった4巻で終わってしまい、計算ずくだったのかそれとも打ち切りだったのか判断が付かないんですが、こじんまりとした長さが変に余韻を誘うね。1.2巻のだるさと対照的な終盤の方の、謎が一気に解けてヒントが線状に繋がっていく様は、なんか高等な数学理論の話を聞いているようで、精緻な故のロマンティシズムを感じます。ちょっと僕の生きているようなのんきな世界からは想像できない、かっちりとした揺るぎのない秩序の世界がどこかにあるって思わせてくれる。それだけでもう僕なんか充分にミステリー。妄想は作品の枠を越えて一気に宇宙を駆けめぐります。


その昔「ヴァーチャル・リアリティー」ってなコトバが流行って、僕は就職活動なんかをしている美大生だったわけだけども、たかがコンピューターの性能が少しばかり上がったからって声高にそんなこと言わなくても、本や映画などを始めとする優れた物語はもう既に「仮想な現実」を手に入れているので、メディア自身の性能とそこで起こせる「仮想現実感」というのは、必ずしも比例しないなんて話しを面接官相手に鼻息荒げにしたのを思い出したよ。リアリティっていうのは例えれば、投げた石がそれにぶつかってこつんってちゃんと返ってくることなんだ。かっちりしたお話は、それだけで石の存在や質感やや色や重みさえ、僕に想像させてくれる。触れる訳じゃないのにね。


物語を感じたいって思える人は手に取ってみることをおすすめします。怖いけど。